6月10日は「時の記念日」。
福岡の神社では、全国でも珍しい壊れた時計を供養する神事が行われています。
全国から届く数々の時計には手紙が添えられていることも。供養後には、再び誰かの大切な時計の部品として時を刻んでいます。
福岡県の恵蘇八幡宮
福岡県朝倉市にある恵蘇八幡宮。毎年、6月10日の「時の記念祭」に合わせて「時計供養祭」が行われています。
今年も、壊れて動かなくなった約100個の時計が祭壇に並べられ、神職が祝詞を奏上しました。
「時の記念日」は、671年に天智天皇が中国の唐から伝えられた漏刻という水時計を建造し、日本で初めて時刻を知らせたとされる日にちなんで制定されました。その天智天皇を祀っているのが福岡県朝倉市の恵蘇八幡宮です。
恵蘇八幡宮 上原実二 宮司
「全国的にも時の記念祭は珍しい行事だと思う。時間というのは平等に与えられたもの、有効的に自分のために活用できるよう考えていただければ」
供養された時計の行き先は
供養された時計は、福岡市博多区にある「福岡時計職人の会」の事務所で大切に保管されています。
福岡時計職人の会 松井隆志 事務局長
「その人の思いがただ供養で終わりじゃなくて、また次の新しい時計に生かされたら時計も喜ぶし、持ち主も喜びます。」
供養された時計は他の時計を修理する際に部品として利用されています。
35年間家族と過ごした時計も再び動くように
1時間おきにメロディが流れる掛け時計。
約35年間、家族と共に過ごした時計も、今年1月に壊れて動かなくなってしまいましたが、供養された時計の部品を使って再び動くようになりました。
修理を依頼した女性
「孫たちも懐かしんできた時計が壊れたのをとても残念がって、それで修理をお願いしました。ありがたいと思います。」
全国から届く時計と添えられた手紙
福岡時計職人の会には全国から壊れた時計が届きます。
阿南時計店 阿南和久さん
「断捨離しているから引き取ってもらえますかと。供養祭に持って行ってもいいか聞いたら『それはいいですよ』と言われました」
時計には持ち主からの手紙が添えられていることもあります。
【添えられていた手紙】 「時計をご供養していただけると知った時は、大きな安堵と感謝の気持ちでいっぱいになりました。」
「時計供養祭」最初は道具を供養する目的で始まった
毎年、6月10日の「時の記念日」に合わせて行われる「時計供養祭」は福岡時計職人の会が企画したものです。
最初は、針や櫛の供養と同様に、時計の職人が使わなくなった道具を供養する目的で始まりました。
その後、壊れて処分に困った時計も供養するようにしたところ、口コミで広がり、今では北海道から沖縄まで、全国から時計が届くようになったそうです。
「時計供養祭」も今年で10年目に
福岡時計職人の会 松井隆志 事務局長
「時計は身につけるものだし、一緒に時だけでなく人生を刻む。何十年もしたら愛着が湧くので、時計が壊れたときには我々が修理できるような体制で、ネジ1つでも部品1つでも役に立たせていただいて、頑張っていきたい」。
江戸時代の時計も
恵蘇八幡宮とともに「時計供養祭」を企画した「福岡時計職人の会」は2014年に結成され、現在は県内の時計職人20人ほどで構成されています。
過去には部品がなくて修理ができないこともありましたが、今では供養された時計の部品を使ったり、修理方法について情報交換をしたりして、修理がしやすい環境になったということです。
「福岡時計職人の会」の事務所には、約1000個の時計が展示・保管されていて、中には江戸時代の時計もあるそうです。
「想い出が詰まっていて処分に困っている」「ゴミとして捨てるのに抵抗がある」
時を刻んできた時計が再び誰かの時を刻む取り組みが広がっています。