『366日』“紗衣”夏子の口から出た衝撃の言葉 交際0日婚を決めた莉子と智也との対比も

遥斗(眞栄田郷敦)が紗衣(夏子)と一緒にいるところを見てしまった明日香(広瀬アリス)。悲しみのあまり、いっそ出会わなければよかったとさえ思ってしまった明日香だったが、周囲の人々の言葉や行動が彼女を遥斗のもとへ向かわせる。『366日』(フジテレビ系)第10話は、「意味のない出会いはない」という池沢(和久井映見)の言葉を実感する回となった。

明日香はちなみ(鈴木絢音)からチャリティー演奏会に誘われ、遥斗のことを考えないようにするためにも練習に励む。そんな中、明日香の音楽教室に通う静原(前田公輝)とちなみが破局した。ちなみと一緒に演奏するためにピアノの練習を頑張っていた静原だったが、彼女とプロピアニストの完璧なハーモニーを聴いて自信がなくなってしまったのだ。

遥斗に悲しい顔をさせないように別れを選んだ明日香には、静原の気持ちが痛いほど理解できた。看護師で、記憶障害にも理解がある紗衣の方が自分よりも遥斗にふさわしいと思えたのかもしれない。

一方、莉子(長濱ねる)と智也(坂東龍汰)は交際0日で結婚することになった。プロポーズしたのは智也ではなく、莉子の方から。「俺が莉子を絶対幸せにする」「私が智也を幸せにする」とお互いに愛を誓い合った2人。彼らが眩しく感じられるのは、迷いがないからだ。莉子は理学療法士の国家試験に合格し、智也は実家の農家と大手スーパーとの契約が決まった。何もかも順風満帆に思えるが、どちらもまだ道の途中。それでも、莉子と智也が2人一緒なら大丈夫と思えるのは、自分だけで完璧になろうとしていないからだろう。

一人前になるまで明日香と距離を置こうとする遥斗に、輝彦(北村一輝)も「そんな日はなかなか来ない」と言う。完璧な人間なんて一人もいない。人間は誰しも“半人前”で、いくつになっても失敗と反省の繰り返しだ。間違ってもいい。だけど、後悔だけはしたくない。池沢の夫は脳出血で意識不明となり、そのまま亡くなったという。遥斗だってあのまま目覚めない可能性もあった。人生は何が起こるかわからないし、大切な人が生きてそばにいることは奇跡そのものだ。

莉子と智也は明日香と遥斗を見てきたからそれを分かっているし、お互いを思う気持ちに迷いがない。だからこそ、手放さないように半人前のまま一緒に生きる道を選んだ。静原もちなみと一緒にいたいと思い直し、彼女の前でピアノの演奏を披露する。その手は震えていて、演奏はお世辞にも上手いとは言えなかった。だけど、静原が半人前な今の自分で精一杯奏でた「きらきら星」が、ちなみにはどんなプロの演奏よりも心に染み入るのだ。

莉子と智也の姿や池沢の言葉、静原の演奏に明日香は背中を押される。こうして知らず知らずのうちに人は誰かに影響を与えているものだ。明日香は遥斗が頑張る姿を見て、端からいろんなことを諦めてしまう自分に別れを告げることができたし、遥斗だって明日香がいたからこそ辛いリハビリを乗り越えることができた。

そして、遥斗は社内で行われた新レシピのコンペで1位を獲得し、それがきっかけで大阪本社から「計画中の新店舗のサブマネージャーとして戻ってほしい」と声がかかる。転勤が決まった遥斗に、明日香は改めて告白した。だが、遥斗はそれを受け入れない。

そこにきて、紗衣の「水野さん、本当は記憶戻ってますよね」という衝撃の言葉。莉子と智也の結婚式で流すサプライズムービーを撮るために同級生たちが集まった教室で、遥斗は高校時代の明日香を思い出していた。もしも本当に記憶が戻っているとするならば、それでもなお遥斗が明日香を突き放すのは和樹(綱啓永)の気持ちを知ってしまったからかもしれない。和樹の方が自分よりも明日香に相応しいと考えているのだろうか。遥斗に告白したがフラれたと話す明日香に、「明日香が好きだ」とついに告げた和樹。明日香と遥斗の幸せを誰よりも願っていたからこそ、和樹はここまで想いを伝えずにいた。2人とも切ないほどに明日香を大切に思っている。どちらか一方が傷つくことは避けられないけれど、遥斗にも和樹にも幸せになってほしい。

(文=苫とり子)

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