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きょうだい間における格差や親への不満は根深い問題だ。しかし、年齢を重ねて弱った親を突き放すこともむずかしい。よい対応策はあるのだろうか。
「母からの援助なんて、ほとんどないのに…」長女の悲しみ
「〈お姉ちゃんだから〉っていつもガマンさせられてばかりで、納得できない!」
「なにいってるの? こっちはいつもお古しか回ってこなかった」
「弟ばかり優遇されてばかりで、ずるい!」
などなど、きょうだい間における不平不満は、それぞれの家庭の数、きょうだいの数だけあるようだ。
親から見ても「手のかかる子ほどかわいい」「娘より息子に教育費をかけがち」等の傾向があるらしく、子どもが成人し、親が高齢となってからも、それらにまつわる不平不満を親子双方が引きずることもある。
ある40代の女性はうんざりした表情で語った。
「うちの母は、私にはいろいろなことを制限するくせに、弟にはやりたいことを思い切りやらせていました…」
話によると、長女である女性には、学生時代から厳しい門限を決められ、アルバイトも禁止。友人関係にまでしつこく干渉し、友人との深夜に及ぶイベントも、泊りがけの旅行もNGだったという。一方で弟には一切の制限はなかった。
母親は、ときに勝手な弟の振る舞いを愚痴り、女性も母親からの指示で弟に説教をしたこともあるという。
「ところがですよ。弟が結婚して子どもが生まれたら、風向きがまったく変わりましてね…」
大学卒業後、弟はすぐ大学時代の同級生と結婚し、子どもに恵まれた。するとどうしたことか、親のいらだちの矛先は「品行方正」な姉に向かった。
「あなたは、就職先もイマイチだし、結婚相手すら見つけられない。なにもかも弟にサクッと先を越されて、情けなくないの?」
人生において親からあれこれダメ出しをされ、親の意向通り従っていた素直な女性は、突然の手の平返しに愕然。しかし一方で、日々の生活では長女として責任を求められる立場。女性はとうとう独身のまま、老親の世話に追われる人生となった。
「父親が亡くなり、母親は〈節約しないと、服一枚気に入ったのが買えない〉と愚痴るので、私がことあるごとに援助をしていたのですが…」
なんと母親は、女性が渡したお小遣いをすべて、弟に渡していたというのである。
「私は母から援助してもらったことなんて、ほとんどないのに…」
下記の図表1は、「国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』の「女性の配偶関係別にみた子の性別、居住距離別、配偶関係別の過去1年間に子や孫のために使った金額」である。
例の女性の母親と同じ「配偶者と死別した女性」の場合、41.3%は同居の未婚の娘にたいしてお金を使っていない。しかし一方で、近距離に暮らす配偶者と子ありの息子にたいしては、お金を使っていないケースは24.2%に留まる。
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[図表1]女性の配偶関係別にみた子の性別、居住距離別、配偶関係別の過去1年間に子や孫のために使った金額
既婚・子ありの息子から、ひとり身の母への援助「これだけ!?」
では逆に、子どもからの援助はどうか。図表2の「女性の配偶関係別にみた子の性別、居住距離別、配偶関係別の過去1年間に子から受けた金額」によると、「配偶者と死別した女性」の場合、7割は同居の未婚の娘から援助を受けている一方、近距離に暮らす配偶者と子ありの息子から援助を受けているケースは5割にとどまる。
金額の差にも要注目だ。同居の未婚の娘の28.1%が10万円以上援助しているが、近距離に暮らす配偶者と子ありの息子からは24.2%が1万円未満。10万円以上の援助は3.3%に過ぎない。
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[図表2]女性の配偶関係別にみた子の性別、居住距離別、配偶関係別の過去1年間に子から受けた金額
「一度〈夫婦共働きで私より高給取りの弟に、援助する必要なんかないじゃない!〉と怒ったことがあるんです。そうしたら、〈子どもがいないあなたには、子育ての大変さがわからないのよ〉といわれてしまいました。そういわれたら、返す言葉もありませんよね」
「弟の子どもたちに、少ない給料からお年玉やお小遣いをあげても、スパチャに使っておしまいだったなんて話を聞かされると、本当にばかみたい…」
従順で、親の言いつけを守った素直ないい子が、大人になってから貧乏くじを引くことになっては気の毒過ぎるが、きょうだい間の不平不満は「素直なほう」が大きくなりがちなのかもしれない。
[参考資料]
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』