自販機の水が10円!その理由は? 「熱中症ゼロへ踏ん張りたい」 40度超える現場 デジタル機器など導入し、建設・製造業者が対策強化

手首に装着して体温を測るアラートバンド。体温によってランプが点灯し、熱中症を防止する=出雲市神西沖町、ダイハツメタル出雲工場

 島根、鳥取両県の建設業者や製造業者が、熱中症対策を強化している。熱気がこもる工場や炎天下での仕事が多い両業種は、他業種と比べて発症率が高い。今年も厳しい暑さが予想され、各社がデジタル機器を活用した体調管理システムをはじめ、冷風設備の設置や飲料品の購入支援など、さまざまな対策で乗り切ろうと試行錯誤する。 

 「命には代えられない」-。自動車部品製造のダイハツメタル出雲工場(島根県出雲市神西沖町)安全衛生グループの福原伸一リーダーが語る。金属を高温で溶解したり、切削時に熱が発生したりする工場内の温度は、夏場は40度を超える。

 このため毎年1千万円程度をかけ工場内に順次、冷風機システムを配備。今夏は手首に装着して体温を測る「アラートバンド」を導入する。15分おきに体温を自動測定し、熱中症の恐れがある37.9度を超えると赤色のランプが点滅し、注意音や振動機能が作動する仕組みだ。

 さまざまな工程の従業員が9月末まで装着。体温推移を記録し、職場環境の見直しや体調管理に生かす。福原リーダーは「暑いからといって機械を止めるわけにはいかない。費用をかけても、できる限りの対策を講じたい」と強調した。

 地球温暖化に海面水温上昇によるエルニーニョ現象が加わった2023年は、各地で観測史上最高の暑さとなった。島根労働局によると、同年の事業所での熱中症の発生件数は前年比47.9%増の108件。このうち建設業が33件、製造業が33件で、両業種が61.1%を占めた。

 両業種の発症率の高さは労働者の高齢化も一因。島根県内の60歳以上の常用労働者(23年6月時点)は、建設業が1917人、製造業が2921人で、5年前よりそれぞれ1.6倍、1.3倍増えた。両業種ともに人手不足が深刻で、再雇用などのシニアが増えているためとみられる。

 建設業の美保テクノス(鳥取県米子市昭和町)は6月中旬から9月末に、複数の建設現場に設置している自動販売機のスポーツ飲料や水の価格を10円にする。同社が約300万円を負担し、作業員が水分を取りやすい環境を整える。無料だと遠慮する人がおり、少額でも払った方が手に取りやすいとの声を踏まえたという。

 昨年は、協力会社の男性社員が熱中症で倒れ、1週間入院した。米子市は今年5月26日、全国1位の32.5度を記録するなど気温が上昇しやすい。安全環境室の小林崇室長は「熱中症をゼロにするため、なんとか踏ん張りたい」と語った。

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