『虎に翼』滝藤賢一のクセ強演技が光る 花岡を侮辱された寅子の“イライラ”が爆発

今週から本格的に寅子(伊藤沙莉)の「裁判官編」がスタート。『虎に翼』(NHK総合)第52話からは、新たに多岐川幸四郎(滝藤賢一)が登場した。

1948年10月。桂場(松山ケンイチ)は初代最高裁人事課長、久藤(沢村一樹)は初代最高裁秘書課長として働いていた。ある日、桂場から呼び出された寅子は家庭裁判所設立準備室への異動を命じられる。当時は大正時代から続く行政機関としての少年裁判所が、犯罪を犯した少年やそのおそれのある少年を対象としていたが、GHQからの通達により、従来の少年裁判所と新設された家事裁判所を合併して、家庭裁判所を発足させる必要があった。寅子にはその重要な任務が与えられたのだ。

桂場に対して「今、私の力が必要だと?」と話す寅子は、続けて「家庭裁判所設立までこぎつけた暁には、今度こそ私を裁判官にしてください」と懇願する。あきれた顔をする桂場だったが、寅子の猛プッシュを受けて、「善処する」と答えるのだった。家庭を支えるためとはいえ、前のめりな寅子が戻ってきたのは素直に嬉しい。

桂場の案内で向かった家庭裁判所設立準備室は、法曹会館の屋上のバラック小屋だった。そこにはイカを炙っている、何やら癖が強そうな室長の多岐川、そして室長補佐の汐見(平埜生成)、名律大学で寅子の同級生だった小橋(名村辰)、稲垣(松川尚瑠輝)がいた。

多岐川を演じる滝藤賢一は、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』やNHK大河ドラマ『麒麟がくる』といった作品に出演。『半分、青い。』では、ヒロインである楡野鈴愛(永野芽郁)の父親を演じており、爽やかな父親像をお茶の間に届けてきた。それにしても、多岐川のキャラクターは強烈だ。第52話の前半では滝に打たれる姿が映し出されていたり、挨拶をする寅子に対し「湿っぽい話も挫折話もつまらん!」と一蹴し酒を取り出したりと、一体どんなキャラクターなのか全く読めない。ちょび髭すらも何やら怪しく思えている。

寅子が小橋と稲垣とともに先立った花岡(岩田剛典)の話をしていると、多岐川は「バカタレ判事の同期なのか。法律を守って餓死だなんてそんなくだらん死に方があるか。大バカタレ野郎だね」とその死を侮辱する。これには寅子は猛反発。しかし、一触即発といったところで、多岐川が「この議論は平行線だ。君も正しい、俺も正しい」と早々に会話を終わらせてしまう。もちろん、多岐川の言い分も理解できなくはない。しかし、意図してか、意図せずしてかはわからないが、友人を失った寅子たちの前で軽率な発言をするあたり、不躾な人間であることは間違いない。

さて、肝心の家庭裁判所設立に向けた会議は難航していた。少年裁判所と家事裁判所はお互いの主張を譲らず、手を取り合おうとはしない。

たびたびインサートされるマッチ箱にイライラする寅子のシーンが、両者の軋轢を表現していたのがお見事だった。肝心な多岐川はというと、会議中にもかかわらず、いびきをかいて寝ている始末。果たして、どうなることやら。
(文=川崎龍也)

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