桂文枝、大阪と違う東京の寄席のしきたりに「大変だった」 共演者にお土産70個&「祝儀を袋に入れて寝ました」

会見に出席した桂文枝【写真:ENCOUNT編集部】

文枝、桂二葉を高く評価「二葉さんが出てきて、救われた感じがします」

上方落語の重鎮、桂文枝が18年ぶりに東京の老舗寄席・鈴本演芸場に出演し、10日間連続で主任(=トリ)を務める。11日の初日公演直前、同所で、落語協会副会長の林家正蔵とともに会見した文枝は、「(芸人や関係者への)お土産も70個持ってきた。ご祝儀もきのうの夜、(ポチ)袋にお金を入れて寝ました」と準備万端。東京のまん真ん中で、創作落語の先達としての存在感を示す10日間への思いを語った。(取材・文=渡邉寧久)

「大阪弁ですし、どれだけお客さんにアピールできるかそれが心配、不安でいっぱいです」ととぼけた口調で漏らす文枝。ここ数日、自身のブログでも「東京の寄席で 僕の落語 いけるかなぁ」「昨日夜 東京について えらいこと 引き受けたなぁと」と心境を吐露していた。

今年3月から1年間にわたり行われている「落語協会百年」の特色ある興行の数々。6月中席(11日~20日)で文枝は、鈴本演芸場昼席でトリを務める。同協会百年実行委員長も務める正蔵も「実現するのが夢のようでございます」と興奮気味に紹介する文枝の芝居に、開演1時間前には鈴本前に入場を待つ行列ができ始めた。

三枝時代に出演したことはあるが、18年ぶりの鈴本。主に7日間興行の大阪と違い、10日連続でトリを務める緊張感。来月81歳になる文枝をしても不安が口をつくが、なかでも気がかりなのは、初日、中日、千秋楽に共演者にどんな気遣いをしたらいいのか、という東京の寄席のしきたり。

それを調べるために、「同い年なんです」という「笑点」メンバーの三遊亭好楽に電話をかけたという。

「そんなのいいよ、出るだけでいいんだから」

好楽のその答えを文枝は間に受けず、「(高座に飾る)花も(ご贔屓に頼んだり)、(寄席)のぼりも用意しないといけない。大変だったんですよ。お土産も70個もってきた。ご祝儀も昨日、袋の中にお金を入れて寝ました。主任となるとそのくらいのことは」と当然の表情を見せつつ、かつてご祝儀申告漏れ騒動を起こした正蔵に 「(ご祝儀の袋があった)地下の金庫はどうなった?」といじる余裕も示した。

トリを務める文枝を盛り上げるために、鈴々舎馬風や林家木久扇、春風亭小朝ら東京のオールスターが顔付けされた番組。文枝は「大阪では、僕がいちばん上の方になってしまいまして、来月には81歳です。東京には(僕より)上の方もいらっしゃる。馬風師匠や木久扇師匠も出ていただける。皆さんと会えるのを楽しみにしたいと思います」と喜びも口にした。

18年前、定席の寄席がなかった大阪の現状を嘆き、先頭に立って「天満天神繁昌亭」の設立に奔走したのが文枝だった。それだけ寄席に対する愛着は深い。

「(繁昌亭ができて)ちょっと盛り上がっていたんですけど、コロナという魔物にちょっとやられた。大阪の場合は、吉本さんの漫才がすごい勢いで出てきましたので、正直、落語は苦戦していたのですが、その中で、(桂)二葉さんという若い女性の落語家が出てきて、救われたという感じがしますね」と、桂二葉を高評価。「女の人と男の人が(落語界は)半々でもいいな、と思うな。(二葉の登場で)多少元気が出てきたと思いますよ」と上方落語の現状に頬を緩めた。ENCOUNT編集部

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