今年も“下剋上”へ J1サガン鳥栖と対戦 去年2度の“ジャイアントキリング”JFL高知ユナイテッドSC 日程面で厳しい条件も「臆せず前向いて挑む」サッカー天皇杯2回戦

サッカー・天皇杯は、12日に2回戦が全国各地で行われます。高知県代表の“JFL”高知ユナイテッドSCは、アウェーで“J1”サガン鳥栖と対戦します。

去年の天皇杯では、J1クラブを2度撃破する“ジャイアントキリング”でサッカー界に大きな存在感を示し、4回戦では優勝クラブ・川崎フロンターレに敗れたものの、最後まで川崎を追い詰めた高知ユナイテッドSC。今年の天皇杯でも“下剋上”が期待される中、12日の2回戦・サガン鳥栖戦のポイントをまとめました。

去年は“J1”を2度撃破 サッカー界に“存在感”示した高知ユナイテッドSC

「天皇杯(全日本サッカー選手権大会)」は、プロとアマチュアが、互いの垣根を越えてトーナメント形式で戦う“日本一決定戦”です。その特性上、JFLなど格下カテゴリに属するクラブが、格上のJ1クラブなどに勝利する“ジャイアントキリング”がたびたび見られ、大会の1つの醍醐味となっています。

J3のさらに下、アマチュアリーグ・JFLに所属する「高知ユナイテッドSC」は、去年の天皇杯、2回戦でガンバ大阪(J1)を、3回戦で横浜FC(当時J1)を立て続けに破る“ジャイアントキリング”で、ベスト16に進出しました。

そして4回戦では、優勝クラブ・川崎フロンターレに0-1で惜敗しましたが、最後まで川崎を追い詰める“粘りのサッカー”を展開。試合が開催された春野陸上競技場(高知市)には、“Jなし県・高知”であるにもかかわらず、平日の夜に7243人が詰めかける盛り上がりを見せ、高知ユナイテッドSCは、大会でひときわ存在感を放ちました。

川崎フロンターレの鬼木達監督も、当時の試合後の会見で、高知ユナイテッドSCを称えるコメントを残しています。

■川崎フロンターレ 鬼木達 監督 「高知ユナイテッドSCの『攻撃へのスピード』と『攻撃にかける人数』は、非常に迫力があった。止めるべきところで止めないと、必ずゴール前にボールがいくな、と。非常に素晴らしいチームだった」

攻撃力あるJ1サガン鳥栖、勢いに乗るJFL高知ユナイテッドSC

今年も、天皇杯での飛躍が期待される高知ユナイテッドSC。5月26日の1回戦では、2年連続で対戦した島根代表の「ベルガロッソいわみ」に1-0で勝利していて、12日の2回戦で、早くも“J1”クラブ「サガン鳥栖」と対戦します。

「サガン鳥栖」は、1997年に市民クラブとして設立され、「J2」が発足した1999年にJリーグへ入会。2012年にJ1に昇格して以降、国内サッカーのトップリーグ・J1に残り続けています。高知ユナイテッドSCにとっては、“格上の強豪クラブ”です。

攻撃の中心は、ブラジル人FWマルセロ・ヒアン。身長188cmの「高さ」と、空いたスペースに「抜け出す力」を生かし、ここまで16試合に出場して7得点(リーグ6位)。高知のDF陣にとっては“手ごわい選手”です。そのヒアンにパスを送る、MF手塚康平やMF堀米勇輝らを「封じ込める」ことや、「不用意なセットプレーを与えない」ことが、高知の勝利への“鍵”となりそうです。

クラブは今シーズン、J1で4勝10敗2引き分け、勝ち点14で17位と低迷しています。直近の公式戦3試合で勝ちがありませんが、今シーズンJ1で勝利した全ての試合で3点以上をあげていて、警戒すべきは、その「攻撃力」です。

一方の「高知ユナイテッドSC」は、2016年に、当時四国リーグに所属していた「アイゴッソ高知」と「高知UトラスターSC」が統合して誕生しました。「Jなし県」高知からの“Jリーグ入り”を目指していて、2020年にJFLに昇格し、今年が5シーズン目。選手は、高知県内の企業でのアルバイトなどをしながら、練習に取り組んでいます。

攻撃の中心は、今シーズンここまで5得点(リーグ3位)のFW小林心。さらに、MF樋口叶、FW新谷聖基、FW東家聡樹も今シーズンここまで3得点と、攻撃陣が“どこからでも点を取れる”サッカーを展開。サイドバックのDF吉田知樹や、今シーズン新加入のDF上月翔聖も、前節で得点に絡む活躍を見せています。守備では、今シーズン新加入のGK大杉啓が全試合に出場しリーグ最少タイの7失点と、好守が光っています。

クラブは今シーズン、JFL歴代4位タイの“開幕7連勝”でスタートダッシュに成功し、ここまで9勝2敗、勝ち点「27」で首位を独走しています。11試合で20得点・7失点と攻守のバランスがとれていて、前節(9日)のミネベアミツミFC戦では、1-2と負けていた後半43分からの大逆転勝ちを収め、勢いに乗っています。
(鳥栖、高知とも、記録はいずれも11日時点)

日程面ではJFLの高知が厳しい条件 それでも「チャレンジャー」として挑む

ただ、今回の天皇杯2回戦は、高知にとっての“懸念材料”もあります。
高知は前節(9日)、“ほぼフルメンバー”で戦っているうえ、今回の天皇杯は、鳥栖への移動も含む「中2日」で2回戦に臨みます。対する鳥栖は、ホームゲームのため移動は無く、日本代表活動によるJ1リーグ戦の休止もあり「中11日」で試合に臨みます。

厳しい条件で迎える“格上”J1との一戦ですが、吉本岳史監督は、「チャレンジャーとして、臆せず前を向いて戦う」と意気込んでいます。

■高知ユナイテッドSC 吉本岳史 監督 「毎回こういう(リーグ戦とは)“違う大会”に臨む時に『どうですか?』と聞かれるが、もちろんJ1の鳥栖は非常に難しい相手だし、我々はその1試合1試合を大事にして、『成長していく時間・感覚などを繋いでいける』ような、いい経験ができる試合かなと思っている。ましてやアウェーで、非常にタフな試合になると思うが、今のように『1つ1つのプレーを楽しむ』ことや、『大事にするべきところを大事にする』。我々は“チャレンジャー”なので、臆することなく前を向いて戦っていきたい」

“下剋上”で一躍“時の存在”になった去年の天皇杯。高知の“チャレンジャー”たちは、今年の天皇杯で、どんな“ジャイアントキリング”を見せてくれるのか。
天皇杯2回戦、サガン鳥栖vs高知ユナイテッドの試合は、12日午後7時、佐賀県の「駅前不動産スタジアム」でキックオフを迎えます。

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