病魔に襲われたデカブレイクとの結婚と移住、そして今は弁当店オーナーに…デカピンク役の「想定外」な人生 “特捜戦隊デカレンジャー”

宇宙警察の6人の刑事たちが、宇宙犯罪者に立ち向かう姿を描いた“特捜戦隊デカレンジャー”。デカピンク役の菊地美香さん(40)は、デカブレイク役の吉田友一さん(41)と結婚して高知に移住し、弁当店オーナーになった。放送から20年を記念した新作映画は高知が舞台。「人生、想定外の連続」と、現在の心境などを語った。

デカレンジャーは「大家族」で「日常」

“特捜戦隊デカレンジャー”は2004年から1年間、テレビ朝日系で放送。宇宙警察・地球署配属の選ばれし刑事たち、デカレンジャー6人が地球を守るために、宇宙犯罪者と戦う姿を描いた作品だ。

1話完結、刑事ドラマ仕立てのストーリーが大人の心をもつかみ、2006年にはファン投票で選ばれる日本SF大会の大賞にあたる「星雲賞」を、スーパー戦隊シリーズとしては初めて受賞するなど幅広い層から支持されていた。

デカピンク役の菊地美香さんは埼玉県出身。小さい頃から歌が大好きで、15歳の時、ミュージカル「アニー」のジャネット役でデビュー。「アニー」はロングランの舞台で、毎年大規模なオーディションが行われることでも知られている作品だ。

10代最後の挑戦となったのが、特捜戦隊デカレンジャーのオーディションだった。難関といわれる戦隊シリーズで見事一発合格し、デカピンク役をつかんだ。

これが転機となり、数多くのドラマや舞台に出演、現在は声優としても活躍している。20年前の美香さんの表情は、まだどこかあどけなさが残る。

▼菊地美香さん 「デカレンジャーは、キャスト始めスタッフの皆さんが大家族のような雰囲気で、20年経っても衣装を身につけると、ずっとデカピンクを演じていたかのような錯覚に陥ります。私にとってはデカレンジャーが日常なので、新作映画のロケも、懐かしさより日常に戻ったような気持ちでした」

放送から12年後の2017年、美香さんにとって、人生を大きく変える出会いが待っていた。ドラマ「科捜研の女」のロケで京都滞在中に再会した、デカブレイク役・吉田友一さんだ。

デカブレイクとの再会、「想定外」のドラマが始まる

デカレンジャー放送から12年後の2017年、美香さんは、ドラマ「科捜研の女」の京都ロケで、偶然にもデカブレイク役の吉田友一さんと再会する。

友一さんは、急性扁桃炎と咽頭炎、さらに末梢性顔面神経麻痺という病魔と闘い、その経験から、俳優業と並行して鍼灸師としての道を歩み始めていた頃だった。

撮影オフの日、美香さんは、デカレンジャー時代さえ一度もなかった2人だけのランチを楽しんだ。その時、家族のような居心地の良さを感じたという。この京都・鴨川ランチがきっかけとなって、2人は急接近。翌年2018年に結婚する。

デカレンジャーの作中では、デカグリーンと結婚したデカピンク。去年、新作映画発表のトークショーで、デカブレイク役の友一さんとの結婚を改めてファンに報告した際には、デカグリーンとは「ビジネス婚」だった、と会場を沸かせていた。

新婚生活のスタートは京都。京都で落ち着いた日々が送れるかと思いきや、思いがけない展開に。美香さんを驚かせた友一さんの決断は「青天のへきれき」だった。

夫は学生に 美香さん「青天のへきれき」

デカブレイクとの再会、結婚。想定外はその後も続く。友一さんは沖縄の離島で鍼灸師として2年間研修。美香さんが再会を果たしたときも、島から京都ロケに参加していた。

そして、結婚後も「離島での学びをより深めたい」と島根大学大学院に進むことを決めたのだ。美香さんにとっては「青天のへきれき」だった。

▼菊地美香さん 「京都で鍼灸院を開いていたので、それを基盤に生活していくものと思っていたらまた学生に戻る、というので驚きました。学費もかかるし、全く『想定外』のことでした。でも懸命に勉強している姿を見ると、大学院の2年間は支えるしかないと」

新婚生活がスタートするも、夫は学生に転身。そして、さらに美香さんの生活は大きく変化していく。

高知への移住 デカピンクは弁当店のオーナーに

京都で新婚生活を送っていたデカレンジャー夫婦。ところが沖縄の離島での研修経験もあり、友一さんは次第に地域医療に心が傾くようになっていた。

大学院時代の恩師が高知市のクリニックの院長だったことが縁で、今度は高知市に移り住むことを決めた。

美香さんの母方の実家は土佐市で、「住むなら緑豊かなところに」という思いもあり、高知への移住にはそれほど抵抗はなかったものの、移住も美香さんにとっては想定外のこと。

移住後、友一さんは、高知市地域活性推進課に地域おこし協力隊として勤務しながら、それ以外の時間は鍼灸院を営むという「二足の草鞋」生活をスタートさせた。

友一さんの鍼灸院は、市内に借りたビルの2階で開院、1階は空きスペースとなっていた。美香さんも「私も何か始めなければ」と悩んだ末、たどりついたのが「お弁当屋さん」だった。

美香さんが俳優としてこれまで最も大切にしてきたのが、「体に優しい食生活」。それを地域の人に提供する弁当店なら、夫の鍼灸院と「医食同源」でつながるビジネスになると考えたからだった。

早速、ビル1階の空きスペースで開店準備を進め、2023年1月に弁当店をオープン。地元産の食材にこだわり「無添加」「グルテンフリー」を売りに、価格設定も、他店との差別化を図り、主力の弁当を「1000円」で販売する戦略を立てた。

特にメインの弁当は、彩り豊かで「映える」とSNSや口コミで広がり、早いときには予約も含め、120個がわずか5分で完売する日もあったという。オーナーが「デカピンク」と知って買いに来る県外からのファンもいたそうだ。

▼菊地美香さん 「自分が『まさか』お弁当屋さんをするなんて思ってもいなかったです。朝4時起きで、5時から仕込みとハードな日々ですが、高知は食材にパワーがある。それを大勢の人に食べてもらえるのは幸せです。私もどちらかといえば、「二足の草鞋」タイプ、俳優業プラス、何かやっていないと落ち着かない性格なんですよね」

想定外だらけの第二の人生だが、「まさかの出来事」をすべてプラスに変えてきた
美香さん、原点だったデカレンジャー放送から20年経ったいま、高知で輝きを増している。

実は友一さんにも人生を左右する「想定外」があった。それを食い止めたのが美香さんで、もし友一さんがそのまま決行していたら、今回の20周年記念映画は違った形になっていたかもしれない。その「想定外」とは。

デカブレイク俳優引退宣言にデカピンクが「待った」をかけた!

友一さんは、結婚を機に俳優を引退し、ファンに宣言する予定だった。しかし美香さんの頭には既に、デカレンジャー20周年映画制作への期待があり、「デカレンジャーが欠けることはあってはならない」と、あの手この手で友一さんの引退を引き留めていた。

結果、当時の6人全員が揃っての制作が実現したが、もしデカブレイクが引退していたら、高知ロケも叶わなかったかもしれない。友一さんは高知ロケ誘致の立役者で、今回の映画にはなくてはならない存在。友一さんにとって「引退しない」選択は「想定外」だったかもしれないが、いまは2人で「あのとき、辞めなくて本当によかった」と振り返る。

▼菊地美香さん 「辞めない勇気というか、辞めない選択が未来を変えてくれました。先のことですが、20周年の次にひょっとしたら25周年も何かあるかもしれない、とつい期待してしまいますね」

いくつもの「想定外」に導かれてたどり着いた新作映画だけに、2人の思いは熱く「一過性のもので終わらせるのでなく、今後につなげる起爆剤にしたい」と意気込んでいる。

▼菊地美香さん
「デカレンジャーは私の原点、大切な作品です。今回もこれぞデカレンジャーという仕上がりになっています。この映画で、大好きな高知を全国の人に知ってもらって、高知ファンが増えてくれれば嬉しい」

▼吉田友一さん 「高知というところは新しいことに挑戦することに対して、非常に寛大。何かやりたいといえばすぐに、まわりで協力体制が敷かれる、高知の魅力のひとつです。これからも映画と地方創生をテーマに、高知ロケ地巡りなどいろんなことを仕掛けていきたいと思います」

夫婦初共演となる「特捜戦隊デカレンジャー20THファイヤー・ボール・ブースター」はデカレンジャーが事件解決のため、高知で大捜査を展開するというストーリーで、6月7日から全国で期間限定上映される。

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