シリア戦出場の日本代表16人を金田喜稔が採点 最高点2人「激変させた」…唯一の「物足りない」評は?

シリア戦に出場した16人の評価は?【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】3バックの安定感…「世界に見劣りしない高さ」も評価

森保一監督率いる日本代表(FIFAランク18位)は6月11日、ピースウイング広島で開催される初の国際試合となった北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選最終節でシリア代表(同89位)と対戦し、5-0で勝利を収めた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した日本代表の16選手を5段階(5つ星=★★★★★が最高、1つ星=★☆☆☆☆が最低)で採点した。

◇ ◇ ◇

<GK>
■大迫敬介(サンフレッチェ広島)=★★★★☆(→後半31分OUT)
ほとんど危ないシーンもなくプレー機会は少なかったが、質の高いフィードで貢献。交代するまで集中を切らさず守り切った。

■谷 晃生(FC町田ゼルビア)=※出場時間短く採点なし(←後半31分IN)

<DF>
■町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)=★★★★☆
やはり高さに対して自信を持っているのが窺え、強さも見せつけた。左利きという部分も改めて魅力に感じたし、後方でのパス回しにアクセントを加えた。冨安と板倉(ともに188センチ)に加えて190センチの町田も並ぶと、世界に見劣りしない「高さ」が光り、今後セットプレーで怖さが増しそうだ。

■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★★☆
先日のミャンマー戦ではボランチで途中起用されて可能性を感じさせたが、本職のDFでもさすがの安定感。3バック中央で冨安、町田のカバーリングをしながら、後方でも的確にパスを左右に捌いて、時に縦につけるパスも入れるなど、3バック中央で持ち味を生かしていた。

■冨安健洋(アーセナル)=★★★★☆
アーセナルではサイドバック(SB)を主戦場としているが、日本代表ではセンターバック(CB)をこなし、この日は3バックの一角でも高水準のプレー。相手が寄せられない絶妙な位置でパスを受けながら攻撃をサポートし、守備でも隙を見せない対応で封殺。ただ後半の4バックでは、右SBとしての攻撃参加、中盤のサポート面でやや物足りなさを感じた。

短い出場時間で見せ場を作った鎌田大地【写真:徳原隆元】

鎌田が見せた「最高級のパス」 シリア戦前半のMVPを選ぶなら…

<MF/FW>

■遠藤 航(リバプール)=★★★★☆(→後半17分OUT)
3バックの展開力が高く、パス回しの面で遠藤の負担は小さくなっており、とりわけ前半は余裕をもって、いいタイミングといいポジションでボールを受けていた。3バックの恩恵を受けた1人とも言える。さまざまなところに顔を出し、守備でも積極的なボールハントが光った。

■鎌田大地(ラツィオ)=★★★★☆(←後半17分IN)
PKを獲得する前に出したパスは圧巻。相馬の抜け出しに合わせて、あの最高級のパスを通せるのが鎌田の凄さであり、歴代の指揮官も魅了された能力の1つだろう。それほどプレー時間は長くないが、そのなかでも見せ場を作った。欲を言えば、より攻撃に絡む姿を見たかった。2試合を通じて「ボランチ鎌田」のポジティブな可能性を示した。

■田中 碧(デュッセルドルフ)=★★★★☆(→後半28分OUT)
遠藤よりも前線に上がる意識が強く、意識的に高い位置取りもしながら相手陣形の穴を狙い続けた。守備のタスクもこなしながら、前線に上がる回数も多く、自ら攻撃の形を作れるのは大きな魅力。ゴールはなかったが良い働きを見せていた。

■川村拓夢(サンフレッチェ広島)=★★★☆☆(←後半28分IN)
地元でのプレーとあって気合も入っていただろう。縦の推進力に加え、決定的なパスやシュートを繰り出せるのが川村の魅力だが、この日は短いプレー時間で大きな見せ場は作れず、やや物足りない出来。とはいえ今は代表で着実に経験を積んでいる段階。まだまだ飛躍できる存在で、海外でもステップアップできる能力を持っている。

■堂安 律(フライブルク)=★★★★☆
前半は久保との距離感も良く、非常にやりやすそうな印象を受けた。ゴール場面では、堂安の思い切りの良さと技術が際立った。あそこで中に切れ込んですぐさま左足を振り抜き、しかもニアサイドを撃ち抜くのは、見ている以上に高度なプレー。それを難なくこなすのが堂安の魅力。前半は右ウイングバックとして可能性を大いに見せつけた。

■中村敬斗(スタッド・ランス)=★★★★★(→ハーフタイムOUT)
抜群。前半1番良かったと言える出来。シリア戦前半のMVPを選ぶなら中村だろう。上田へのアシストは絶品だったし、堂安のゴールも中村の圧巻パスが起点。中村が絡めばチャンスという雰囲気を醸し出し、実際にピッチ上で体現。要所で「凄い!」と思わせるプレーを連発してくれた。

■伊藤洋輝(シュツットガルト)=★★★★☆(←ハーフタイムIN)
左SBとしてプレーし、ビルドアップでさまざまなボールの捌き方を見せてくれた。南野のゴールは伊藤のインターセプトから生まれたもので、出足の鋭さや判断もプラス材料。6月シリーズの2試合を通じて安定したパフォーマンスを披露した。

■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★★☆(→後半17分OUT)
堂安のゴールにつながったドリブルも良かったし、オウンゴールにつながった仕掛けも評価できる。自分のシュートでゴールを狙っていたのはひしひし伝わってきたし、結果的に相手にも脅威を与えていた。前半のシャドーの位置で自由を与えると伸び伸びとプレーして生きるし、堂安との関係性も良かった。

左サイドからチャンスを演出した相馬勇紀【写真:徳原隆元】

停滞していた流れをガラッと変えた男…「気迫があふれ、チームを活性化」

<MF/FW>

■相馬勇紀(カーザ・ピア)=★★★★★(←後半17分IN)
途中交代で、やや停滞していた試合の流れをガラッと変えた。果敢に仕掛けてPKを奪取し自ら沈めただけでなく、馬力あふれる走力を生かして攻撃にアクセントを加えた。すべてのプレーに気迫があふれ、チームを活性化。1人でゲームを激変させた――そう評しても過言ではないだろう。

■南野拓実(ASモナコ)=★★★★☆
前後半を比べると、前半のシャドーの位置が最適解に感じたし、後半は2列目左で窮屈そうな印象を抱いた。結局、ゴールは中に入り込んだ時に生まれたもので、やはり中央付近でプレーするほうが持ち味は生きるし、怖さもある。

■上田綺世(フェイエノールト)=★★★★☆
ヘディングは完璧。周りからパスが出てくるため、常にアンテナを張っていた。力強いターンからのシュートもあり、上田の真骨頂を見せつけた。後半は4バックになった影響もあったのか、やや効果的な絡みが減ってしまったが、それでも前半の出来を考えれば十分なパフォーマンス。小川との競争も良い刺激になりそうだ。(金田喜稔 / Nobutoshi Kaneda)

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