「怒られない程度に楽しみたい」強靭なメンタルで阪南大高を全国に導いた2年生MF瀬尾優斗

阪南大高MF16瀬尾優斗(写真中央)

 令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)大阪予選の中央トーナメント準決勝で阪南大高が2-0で大阪桐蔭を下し、3大会ぶり6回目の全国出場を決めた。

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 プリンス関西1部で開幕から6戦無敗を続け首位を走る阪南大高だが、準々決勝は近大附から70分+延長戦でもゴールを奪えず、辛くもPK戦で競り勝ち突破。そしてこの準決勝では序盤から相手に押し込まれる展開。14分には相手のFKが風に乗ってポストを直撃。23分にはFKからヘディングシュートを許し、GK1沖見駿介(3年)のセーブで辛うじて難を逃れた。

 

 「こっちが準備してきたことが全部逆手の方向に出てしまった」と、ここまで戦況を見守っていた濱田豪監督は「我慢させ続けるよりは」とハーフタイムを待たずに24分に最初のカードを切る決断をした。相手の5バックを警戒し、ボランチ起用の多いMF福本一太(3年)を1.5列目に配置し中央をこじ開ける狙いだったが、ここが厳しいと判断。MF16瀬尾優斗(2年)をトップ下に投入し、福本をボランチに下げた。

瀬尾の先制ゴールでスタンドも歓喜

 ここで投入された瀬尾がMVP級の活躍を見せる。DFの裏に抜ける動きで相手のDF陣を下げさせ、さらにはこれが自軍が押し上げることにも繋がり、自分たちの間延びも解消された。中盤底で福本のボールハント能力も生きてペースを掴んだ。さらに瀬尾は先制ゴールを決めた他、後半にも追加点に繋がるシュートを放ち、2-0での勝利に大いに貢献した。

 「淡々とやる子が(相手にとって)嫌な役割をやってくれた」と指揮官がそう評する瀬尾。しかし、実は「緊張はしているかもしれないんですが、緊張していないように見せているんです」と、自然とできている部分もありながら、意図してそう見せていると明かした。

 「3年生を尊重してあげたいのと、あの子は途中から行ってもコンディションを落とさないんで、スタートからしか行けない子じゃない。普段の雰囲気もキョトンとしている子なんで、試合でもキーになりますよね」と試合の軌道を修正してくれる瀬尾は濱田監督から重宝される存在だ。

 それでもこの舞台で前半途中に声が掛かれば普通なら慌ててしまうだろう。それでも瀬尾は「急な交代だったので、特に心の準備をその場でするというよりは、前日からチームが良い雰囲気だったので、そのノリで行きました」と言い切ってしまう。やはり強靭なメンタルの持ち主のようだ。

瀬尾のスライディングシュートが2点目に繋がった

 さらに「自分でもメンタルにムラがある方ではないと思っているんで、これが準決勝だからと気合を入れるってよりは、どの試合もそれなりにやっていこうとう方なので。プレーでミスしてもすぐに切り替えて次に行く」と話す。本人は意識していないようだが、彼の失敗を気にしない積極的な姿勢がチームを勢い付かせる。特にみんなが緊張するような試合でその存在はさらに際立つ。

 枚方FC出身の瀬尾は頑張るというよりも、楽しんでサッカーをしたい意識が強い。しかし、いい意味で高校サッカーに揉まれ、適度に泥臭いプレーが身に付いたことで、チームに欠かせない選手へと変貌した。

 「高校サッカーに大切な戦うっていうところは高校で成長できたかなと思います。その中でも遊び心だったり、楽しんでプレーすることだったりが良いと思っているので、怒られない程度に楽しみたい」

 "怒られない程度に楽しみたい"こんなことをサラッと言えてしまう選手はそうはいない。

 「全国に行きたくてこの高校に来たので、全国でも楽しみながらやりたい」このメンタルの持ち主が全国でどんなプレーを見せるのか。この2年生のプレーをこちらも怒られない程度に楽しみたいと思う。

 (文・写真=会田健司)

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