「漁師町のヒラメ」市場に 相双漁協、エビが食べ...自然な血抜き

ヨコエビに表面を食べられたヒラメ。市場で流通していないが、漁師の間では味に定評がある

 相馬双葉漁協は、ヨコエビによる食害で出荷していなかったヒラメを市場で流通させるため、本格的な検討に入った。ヨコエビに食べられ、見た目が良くなく、廃棄していたが、実は海中で自然と血抜きされるので「臭みがなく、甘みもあっておいしい」と漁師にひそかな人気がある。11日は相馬市で会合を開き、販売基準などの方針を確認した。今後、拡大操業検討委員会で協議を進め、承認が得られれば販売する。

 「知る人ぞ知る漁師町の魚」として知られる出荷していないヒラメ。会合では、通常取り扱われる活魚や鮮魚と明確に区別して別枠で販売することや、ヨコエビによる被害に程度の差があることから、50%以上の食害が認められるヒラメを販売するなどの基本方針を確かめた。

 販売が軌道に乗れば、廃棄量の削減はもちろん、全体的な水揚げ量の拡大や漁師の収入向上が期待される。同漁協はこれまで、「エビが食べる」と漁業の神「えびす様」に由来した「恵比寿(えびす)ヒラメ」と名付け、市場流通に向けて仲卸業者などと協議を続けていた。活動の中心を担う同漁協の漁師、石橋正裕さん(44)は「これだけおいしいのに、売らないのはもったいないと思っていた。漁師しか知らないおいしい魚を広めていきたい」と話した。

 同漁協によると、ヨコエビは固定式刺し網にかかったヒラメに付き、表面やえら、内臓などを食べる。食害は東日本大震災後、増加傾向にあり、網にかかったヒラメの9割程度に被害が出たこともあったという。

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