【環境考察/気象の変化】少雪、悩むスキー場 降る量に変化も

積雪が少なく地面が見えるスキー場。雪をかき集めて一部コースのみ営業した=2023年12月(ホテルリステル猪苗代提供)

 「今季(2023~24年)はかなり雪が少なく、シーズンを通して閉鎖したコースがあった」。猪苗代町のスキー場「リステルスキーファンタジア」スタッフの山内妙(49)は思い返した。雪が1メートル近く積もるシーズンがある中、今季は10~15センチほど。雪をかき集めて初心者コースのみで営業した。

 ここ数年は1月に雨が降ることも。「冬に雨が降ることはあまりなかった。雨が降ると(天候によって)コースが凍ってしまったりするので、スキー場への影響は大きい」。県内では今季、雪不足のため県総合スポーツ大会の会場が変更になった。「これからのスキー場運営は難しい」。山内は不安を口にした。

 近年、降雪状況が変化してきている。県がまとめた報告書によると、県内の年間降雪量は1980年ごろまで増加傾向だったが、以降は急激な減少傾向にある。

 初の顕著な大雪情報

 一方で2022年12月には会津を中心に大雪となり、県内で初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が出された。会津若松市や西会津町で倒木による車の立ち往生や集落の孤立があったほか、停電や断水なども起きた。雪が多い北塩原村の住民であっても「一晩でこれだけ降り積もるとは」と驚くほどだった。

 降雪の変化について、地球温暖化の影響を指摘する声がある。気候変動が降雪に与える影響について研究する気象庁気象研究所主任研究官の川瀬宏明(43)は「温暖化によって一冬に降る雪の総量は北海道の一部を除いて全国的に減るが、一度に大量の雪が降る『どか雪』は増えるのではないか」とみる。

 海からの水蒸気増加

 川瀬によると、温暖化で日本海の海面水温が上昇し、海からの水蒸気量が増加。雪雲がより発達し、場所によってはどか雪になる可能性が高まるという。川瀬らの研究では「10年に1度の割合で起きる大雪」の可能性を温暖化の有無で比較すると、北陸地方では約5倍の違いがあった。

 ただ、標高などで状況が異なり、水蒸気が増えても気温が0度を超えると雨になることから、冬の雨が増える地域もある。県内に置き換えると、会津ではどか雪になり、いわき市など沿岸部では強い雨の降る可能性が高まるという。

 川瀬は今後の降雪に関して「過去の経験に照らして『これくらいなら備えをしなくても大丈夫』と思わないでほしい」とした上で「最新の気象情報を確認し、より危険な可能性があると思って備えることが大切だ」と注意喚起した。(文中敬称略)

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 顕著な大雪に関する気象情報 短時間に顕著な降雪が観測され、その後も強い降雪が続くと見込まれる場合に気象庁が発表する。県内では2022年12月に只見町などで初めて出された。

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