海外への修学旅行に40万円!? 円安で費用急上昇 「旅費考えると…」 国内への切り替えや国内・海外選択制も

広島県内の高校の昨年の修学旅行のしおり。東北・関東コース(左)とシンガポールコースの2種類ある

 新型コロナウイルスの流行が落ち着き、海外への修学旅行が復活している。ただ、円安や燃油サーチャージの高騰に伴い、費用はコロナ禍前より格段に上昇。広島県内の公立高校では総額が40万円近くのところもある。苦肉の策として、行き先を国内へ変える動きも出ている。

■姉妹校提携あり「切っても切れない絆」と説明

 広島市西区の40代女性は「旅費を考えると胸が苦しくなる」と、切実に語る。市内の高校に通う長男の修学旅行の費用は小遣いやパスポート代も含めると40万円弱だ。「日用品が値上がりし家計は苦しい。だからと言って、行かせないのはかわいそう過ぎるし…」

 海外へ行く意義は―。「切っても切れない絆がある」と説明するのは、ハワイに行く井口高(西区)だ。2000年に姉妹校提携した現地の高校と「日米で使える平和教材を作る」というテーマで学習を深めてきた。両校の生徒は2人1組のペアになり、関係を温める。矢野就暁(のりあき)教頭は「会って話せば、相手の発言の背景を感じ取れる。得がたい経験」と強調する。

 ハワイ行きは5年ぶり。先輩から「現地で学んだ達成感」を聞く機会が乏しく、3泊5日で約33万円の費用にばかり目が向かないかとも気をもむ。ハワイ行きに憧れて進学する生徒がいるとはいえ、家庭の経済負担を考えるとハワイ行きは苦しい判断だった。来年はハワイと国内の選択制にするという。

■国内変更「費用を理由にいけない生徒を出したくない」

 三原東高(三原市)は今年、行き先を国内に切り替えた。5年ぶりに台湾行きを計画したが、前回は1人約10万円だった費用が約15万円に高騰。教員からも異論が上がり、東京に変更した。さらに2泊3日に縮めて10万円台に抑える予定だ。竹内大雄(ともお)教頭は「費用を理由に行けない生徒を出したくない」と話す。

 三津田高(呉市)は選択制で、シンガポール行きと東北・関東行きを設けている。保護者から海外でのコロナ感染を心配する声が上がったためという。シンガポール(2泊5日)は昨年の約20万円に比べ高くなる見込みだが、生徒の約75%が選んだ。坂本伸宏校長は「大学訪問や企業での研修など中身を充実させ、期待に応える」とする。

 中国新聞が任意で選んだ県内の公立高30校に尋ねると、本年度、海外へ修学旅行に行くコースを設けたのは8校。台湾、ハワイの順に多かった。「姉妹校がある」という理由が目立った。

 国内に絞ったのは22校で関東、沖縄の順だった。「東京で国内トップ級の大学や研究施設を見る」「東北で防災を学ぶ」などの理由だ。

 公益財団法人「日本修学旅行協会」(東京)によると、修学旅行は各校の完全オーダーメードのため費用が割高という。竹内秀一理事長(71)は「費用が高騰する中、学校側はより丁寧に行き先を選んだ理由を保護者に説明する必要がある。生徒にどんな力がつくのかも分かりやすく伝えるべきだ」としている。

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