高配当株投資をするなら「ドル・コスト平均法」よりも「投資可能な資金を一括投資」がおすすめな理由【マネックス証券チーフ・ストラテジストが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

投資初心者にオススメの買い方としてよく紹介されるのが、「高配当株は数回に分けて購入するべき」ということです。しかし、『利回り5%配当生活』(かんき出版)の著者である広木隆氏は、初心者こそ高配当株投資は一括で購入した方が良いと指摘します。さらに、高配当株は「極論いつ買ってもいい」ので、サラリーマンに適しているのだとも言います。その理由を著書より一部抜粋してご紹介します。

高配当株は極論でいえば「いつ買ってもいい」

高配当利回り銘柄投資は、買うタイミングをあまり気にする必要がありません。

デイトレードのような超短期売買を繰り返すようなスタイルであれば、タイミングは重要です。株価の下落が底を打ったと思われるところですかさず買いを入れ、上昇トレンドに乗れたら売り場を探す。

逆に株価が天井を付けたと思ったところで信用の売りを建て、思惑通りに下落トレンドになったら、売ったものを買い戻すタイミングを狙う。これを繰り返すだけです。

相場の波は、分刻みの小さい波の連続が1時間という小型の波をつくり、1時間という小型の波の連続が、1日の大きな波をつくります。さらに1日の波が1週間の波をつくり、それが1カ月、1年単位の波をつくります。

多くの投資家は、この波に乗ることこそが、株式投資で成功する秘訣だと思っています。だから、「株式投資で儲けることは簡単だ。安く買って高く売ればいい」などという、詠み人知らずののようなものが、個人投資家の間で、まことしやかに言われるようになるのです。

確かに、短期の波を取りにいくデイトレーダーたちからすれば、この波が自分たちに儲けをもたらしてくれるものなので、常にチャートをチェックして、儲けるチャンスがどこにあるのかを、目を皿のようにして見ています。

でも、このような取引は極めて限られた人にしか出来ません。ずっとパソコンの画面に表示されたチャートを凝視し続けるのは、会社勤めをしている人や学校に通っている人には不可能です。

とはいえ、株式投資を専業とするために、会社を辞めたり、学校を中退したりするわけにもいかないでしょう。もちろんそうして専業投資家として成功している方もいらっしゃいますが、多くの人はそこまで踏み切ることはできません。

そうであるにもかかわらず、時代は投資することを必要としています。では、普通に会社勤めをしているような人が株式投資をするには、どうすれば良いのでしょうか。その答えが高配当利回り銘柄投資なのです。

高配当株投資がサラリーマンに適している理由

では、どうして高配当利回り銘柄投資が、普通に会社勤めをしているような人に適した投資法なのでしょうか。

それは、いつ買っていつ売るのか、というタイミングを一切、無視して投資できるからです。極論すれば、いつ買っても良いのです。

株式投資というと、多くの人は値上がり益を得ることに主眼を置きます。だからタイミングを重視するわけですが、高配当利回り銘柄投資は、値上がり益ではなく、配当を得るのが目的の投資法です。

たとえば自分が4%の配当利回りを欲しいと考えていて、それを実現している銘柄があったら、即買いなのです。

投資家にとっての配当利回りはその銘柄が買えた時点でほぼ確定します。その銘柄を保有し続け、かつ配当額が変わらない限り、投資コストも利回りも変わりません。

極端な言い方かも知れませんが、納得できる配当利回りの水準であれば、その後、株価がどれだけ下げたとしても、全く関係ないのです。株価の値動きなど忘れてしまっても良いくらいです。

最大のリスクは、乗り遅れること

株式や投資信託を買う方法として、よく投資初心者向けの本で書かれているのは、一度にまとまった金額で購入するのではなく、数回に分けて購入しましょう、という方法です。

それも、できれば積立投資が良い、ということなのですが、高配当利回り銘柄投資の場合は、出来れば自分が投資できる資金を早くまとめて投資したほうが良いと思います。

なぜ一般的には積立投資が良いと言われるのか、ご存じでしょうか。ちょっと投資をかじった経験のある人なら、恐らく多くの方が「ドルコスト平均効果が得られるから」と答えるのではないでしょうか。

ドルコスト平均効果とは、一定の期間を開けながら、一定金額で、同一のものを買い続けることです。たとえば毎月25日に、東証株価指数に連動するインデックス型投資信託を1万円ずつ買っていく、というのがそれです。

定額積立投資は、何となく価格変動リスクを緩和できそうな気がするので、特に投資初心者に対して勧められる傾向があります。でも、高配当利回り銘柄投資の場合、私は出来ることなら一括で投資することをお勧めします。

ドルコスト平均効果は、値段が大きく下がった後、上昇に転じたときに効果を発揮します(細かいシミュレーションは割愛します)。

株価はもちろん値下がりするだけでなく、値上がりすることもあります。値上がりすればキャピタルゲインを得ることはできますが、問題は配当利回り狙いで長期投資する場合、配当額が変わらないと、配当利回りが下がってしまうことにあります。

逆に株価が下落すれば、配当利回りは上昇しますが、キャピタルゲインは得られません。株価が上昇するか、それとも下がるかは誰にも分かりません。

だからこそ、現状の配当利回りで納得できるのであれば、運用できる資金を総動員させて、納得できる利回り水準の段階で、配当利回りを確定させたほうが良いのです。

高配当利回り銘柄投資にとって最大のリスクは、株価が値上がりして、自分の望む配当利回りが得られなくなることだと理解してください。

普通、株式投資をする場合、多くの人が恐れるのは、自分が投資したときの株価よりも値下がりすることです。

でも、それはキャピタルゲインを狙った投資をしているからです。高配当利回り銘柄投資の最大のリスクは、自分が投資する前に、お目当ての銘柄の株価が上昇してしまうことです。その意味では、発想の転換が必要だとも言えるでしょう。

広木 隆

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

※本記事は『利回り5%配当生活』(かんき出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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