ただただ美しいという他ない。餌をばら撒いて相手に食いつかせた鎌田大地のサッカーセンスが恐ろし過ぎる【W杯予選】

2024年6月11日、北中米ワールドカップ・アジア2次予選でシリアを相手に日本が前半から圧倒する。これだけ縦パスが何本もスパスパと通れば、プレーしている選手たちは楽しいだろう。実際、堂安は「やっていて楽しかったです」と証言しており、冨安や南野も3バックシステムについて「やりやすかった」とコメントしている。

相手ゴールに矢印が向いている、効果的な縦パスが得点機に結び付きやすいかは今回のシリア戦を見れば理解できるはずだ。如何に効率よく敵の背後をとるか、その重要性を改めて痛感させられた試合でもあった。

もっとも印象的だったパスは、71分に鎌田が相馬に出したそれ。左サイドの相馬がマーカーのアムプントゥル・ラチマン・ウエスの裏に抜け出そうとしたタイミングでエリア内に蹴り入れたパスはパーフェクトだった。

餌をばら撒いて相手に食いつかせる。そんなメッセージが感じられ、事実、後手に回ったアムプントゥル・ラチマン・ウエスはPK覚悟で相馬をファウルで止めるしかない状況に陥った。そう考えると、計算し尽くされたプレーに映るが、鎌田曰くそのパスを出す直前に「相馬のことは見ていなかった」そうだ。

試合後の囲み取材でそれを聞いた著者は「えっ、そうなの?」と素直に驚いてしまった。ノールックであそこまで高精度のパスを出せるのかと。ある意味、そのサッカーセンスは恐ろし過ぎる。

ただただ美しいという他ない。鎌田にとっては平凡なプレーなのだろうが、見ている側からすれば芸術品。鎌田の魅力が凝縮されたプレーと言っても過言ではなかった。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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