「ベテランが気を遣って周りに合わせる方がチームのためになる」。守田英正が考える攻撃的3バックを機能させるポイント

2026年北中米ワールドカップ・アジア最終予選前の最後の底上げの場となる6月シリーズ。日本代表は6日に敵地でミャンマーと対戦して5-0の完勝を収めた。11日のシリア戦に向け、チームは8日に広島入りし、9日から戦術練習に突入。この日も冒頭約30分を除いて非公開で調整し、シリア戦でやるべきことを入念に確認した。

前日まで全体練習を途中離脱していた長友佑都(FC東京)はフルメニューをこなした模様。長友と同様にミャンマー戦はメンバー外だった久保建英(レアル・ソシエダ)の方は分からないが、彼らも戦力に入ってくる可能性が出てきたと言っていい。

森保一監督はミャンマー戦に続いて、攻撃的3バックのテストを継続する見通し。スタメンはミャンマー戦に出ていない選手を軸に据えると目される。

となれば、中盤は遠藤航(リバプール)と田中碧(デュッセルドルフ)のボランチで、2シャドーの一角は南野拓実(モナコ)が確実。もう1枚は旗手怜央(セルティック)が有力視される。右ウイングバックに堂安律(フライブルク)が初めて起用される公算も高まっており、興味深いゲームになりそうだ。

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攻撃的3バックを機能させるためには、やはり中盤の連動性が必要不可欠。ミャンマー戦の前半は守田英正(スポルティング)がアンカー気味に位置し、もう1枚のボランチ旗手が前目に上がり、左シャドーの鎌田大地(ラツィオ)と流動的に動きながらチャンスをクリエイトした。

「僕は最初から真ん中で構えて怜央を1個上げて、大地と怜央で左で攻撃させてチームを活性化させようと話していた。ただ、自分のポジショニングの気遣いも、もうちょっとできたかなと思います」と、守田はミャンマー戦での狙いを振り返る。

それが90分間続けば良かったのだが、後半になって川村拓夢(広島)がボランチ、鈴木唯人(ブレンビー)が右シャドーに入ると、状況は一変。中盤の面々が各自の持ち場をキープするだけになり、流動的かつダイナミックな位置取りや攻めがやや影を潜めてしまった。

特に川村の潜在能力を引き出せなかったことを、守田は大いに反省。「彼はフィーリングでプレーするタイプだと思うんで、あんまり頭でっかちになって動けなくなっても仕方ない。普通に楽しんでもらいたいなっていうか、まだ彼が合わせに行く必要はないとは思うので、僕が合わせた方がスムーズに行く。基本的にベテランが気を遣って周りに合わせる方が、チームのためになるのかなと感じます」と、代表5年目に突入した29歳のボランチは改めて自身のタスクを整理していた。

守田の提言は、シリア戦に出る中盤のユニットにも言えること。遠藤と田中は過去に何度もコンビを組んでいるため、特に戸惑うことはないだろうが、攻撃的3バック、かつ南野や旗手ら2シャドーが前にいることを考えると、これまでとは感覚や連係面が微妙に異なるはずだ。

田中と旗手は川崎フロンターレ時代からの蓄積があるため、柔軟に立ち位置を変えながら攻撃を繰り出せるだろう。とはいえ、周りにいる選手が違えば、やはり阿吽の呼吸で動くのは難しくなるし、相手のシリアもミャンマーより一段階レベル的に上。あらゆる面で難易度がアップすると見ていい。

「(シリアは)前に高くて強い選手がいるので、リスクマネジメントやクロス、ロングボール対応も気になるところ」と町田浩樹(ユニオンSG)も強調。蹴り込んでくる相手を確実に消しながら、中盤で良い距離感を保ちつつ、効果的な攻めを繰り出さなければならない。そのハードルは高いのだ。

「放り込んできた相手に対し、人に行き過ぎると危なかったりする。常に個で上回れればいいですけど、相手が強くなればそうもいかなくなる。やっぱり追い方を含めて、『どこを捨てて、どこで奪うか』をハッキリさせることが大事。そうすれば、アジアカップの時のようになることは少なくなる。難しいですけどね」と守田は注意点を口にした。

シリア戦ではそれをキャプテンの遠藤を中心にしっかりと全員に共有できるかどうかが肝心。アジアカップでそこが十分にできなかったからこそ、最終予選を控えた今、目に見える前進を示すべきなのだ。

シリア戦でも、途中から川村や鈴木のような代表歴の浅い選手が入ってくることも考えられる。そこでノッキングを起こしていたら、それこそ「主力級抜きには戦えないチーム」になってしまう。

実際、遠藤は来季のリバプールで試合に出続けられる保証はないし、田中も新天地次第ではどういう状況になっているか分からない。鎌田や旗手にしても不確定要素が少なくない。そういった数々の不安を払拭するためにも、シリア戦では異なる組み合わせ、メンバー構成になっても一定以上の水準の質を保ち、攻撃的3バックの成果を出せる集団であることを実証してほしい。そのうえで、複数得点を奪って勝利できればベストだ。

強い日本を取り戻すべく、彼らにはシリア戦を良いリスタートの場にしてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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