「高齢者にバラまくな」自治体のスマホ購入補助に批判 文京区は反論「社会参加の手段として意味ある」

スマートフォンを持ったことがない高齢者に対し、自治体が購入補助金を出していることについて、バラマキではないかとX上で批判も出て、論議になっている。

「65歳以上の方必見!」「補助金は最大2万円!」。東京都文京区は、チラシでこううたって、「初めてのスマホデビューを応援します」と呼びかけている。

スマホ購入補助は数年前から各地で実施

このチラシについて、納税者は自腹で買っているのに、高齢者はiPhoneを買うと税金から2万円がもらえると、Xで2024年6月9日に指摘があった。

この投稿は、X上で拡散して、様々な意見が寄せられ、大きな話題になっている。

文京区の制度は、「シニア世代スマホデビュー応援補助金」と題して、スマホを初めて購入する65歳以上の区民に対し、2万円を上限に補助するものだ。本体購入費のほか、充電器購入費、契約事務手数料、データ移行手数料やアップルかグーグルのID・アカウント設定料を含んだ総額が対象になっている。

チラシでは、「スマホをお持ちでない方、ガラケーからスマホに買い替えを検討されている方は、この機会に是非、スマホを購入してみませんか」として、24年度でこの制度がラストだとする赤字の注意喚起に向けて、高齢者がスマホを持って指差すイラストが描かれていた。

この制度について、「文京区金持ってそうだからいいんじゃない」との声もあったが、投稿に賛意を示す声も多かった。「通話しかしない年寄りには、必要ないのに」「補助金バラマキ」「シルバー民主主義も来るとこまで来てしまった」「小学生を対象にするなど未来に投資して欲しい」と疑問視する書き込みが相次いでいる。

実は、高齢者にスマホ購入補助を行っている自治体は、全国のあちこちにある。

報道によると、大分県玖珠町が20、21両年度、65歳以上を対象に1人2万円を上限にスマホの購入補助を行うなど、数年前から各地で実施されている。

「区民の声」に苦情メールが匿名で2件

自治体が購入補助に取り組んでいる背景には、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を掲げて、政府が21年9月にデジタル庁を発足させ、同庁で行政サービスの原則オンライン化を進めていることも背景にあるようだ。

政府としては、国と自治体の大半の行政手続きをスマホ一つでできる社会を目指すとされている。

購入補助を担当している文京区の高齢福祉課は6月12日、J-CASTニュースの取材に対し、国から補助などは受けていないとして、区独自に22年10月から制度をスタートさせたと明かした。その理由については、次のように説明した。

「そもそもは、コロナ禍で外出できなかったお年寄りの方が孤立化するのを防ぐのが目的でした。最近は、ガラケーの種類も少なくなっており、ペイペイなどのキャッシュレス決済のポイント機能は、スマホでないとできません。スマホを持っておられる方の多くは、LINEを使ったり写真を撮ったりして楽しんでおられます。持っていない方の社会参加の手段として、スマホを持つことは大きな意味があります。そのきっかけ作りとして始めました」

スマホを持てば、オンライン化した診察券、区の防災アプリに対応できるほか、5月に成立したマイナンバー法改正で全機能をスマホに搭載できるようになったマイナンバーカードも使えるとした。

前出の投稿がX上で拡散した影響のためか、スマホの購入補助について、ここ数日で「区民の声」に苦情メールが匿名で2件届いたという。いずれも、「高齢者にバラまくな」という内容だった。

これに対し、区の高齢福祉課では、次のように説明した。

「バラマキと言われましたが、子どもにも補助金が出ています。お年寄りの方が社会参加する手段として、スマホを持っているメリットはあると思っています。悪意あるメールなどについては、無料のスマホ講習会などをしていますので、参加してスキルを学んでほしいですね」

なお、購入補助は、22年度が267件、23年度が約170件と減っており、役割は終えたと判断して、24年度末で終了する予定に変わりはないとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

© 株式会社ジェイ・キャスト