町田出身歌手 乳児専用劇場、設置の夢  鶴川から  周知に奔走 町田市

代表のあらたにさん

町田にベイビーシアターを広めようと活動する女性がいる。歌手のあらたに葉子さんはコンサートで全国を回り、子育てに悩む人たちと接するうちに「相談場所としても機能する乳幼児専用劇場を作りたい」と考えるようになった。現在は定期的な公演を通して、周知を続けている。

反応豊か

ベイビーシアターとは、ヨーロッパ発祥の乳幼児とその親のための舞台芸術を指す言葉。舞台といっても演者は壇上に上がらず、フラットな場所で子どもと目線を合わせ、ダンスや歌を披露するという。そのコンサートに参加する子どもの反応は、音に興味が向く子もいれば、人の動きを観察する子、おしゃべりな子など、十人十色。あらたにさんはその場で「子ども達との交流」が生まれるベイビーシアターに惹かれ、設置の夢を抱くようになった。

あらたにさんが鶴川で取り組みを始めたのは2020年だが、日本での動きが始まった10数年前からベイビーシアターの歌手として全国を回っていた。コロナ禍をきっかけに公演が減ったことで、町田での開催を本格的に始動させた。

代表を務める「町田にベイビーシアターを広げる会」では、0〜3歳児までの乳幼児とその保護者、妊婦を対象に公演を行い、終演後には楽器を自由に体験できる時間を設けている。町田はあらたにさんにとって、小学校6年生から結婚するまでの時間を過ごした場所であり、愛着がある。「子育てがしやすいといわれ、人口も増えている町田市だからこそ、コミュニティとなる場所が必要」と話す。

育児の悩み解消

一方で核家族化が全国的に進行する中、「親一人での子育て」が増加したことであらたにさんが感じたのは、育児の悩みを気軽に相談できる場所の少なさ。コンサート後の楽器体験は、その解決手段とも考えており、そこでの親同士の交流に期待する。楽器で遊ぶことで心がほぐれ、悩みを打ち明けられることもあるという。

現在は和光大学ポプリホール鶴川(能ヶ谷)を中心にコンサートを開きながらも「専用の劇場が必要」と考えるのは、文化と子育ての融合する環境の重要性を感じているからだという。相談目的だけなく、日常から足を運びやすい文化的な施設は、コミュニティ作りの機会になると考える。「社会に文化があってこそ豊かな人生になる。文化に親しみがあると、自然と他者を大切にすることを学べる」

ベイビーシアター専用劇場の設置を目指し、現在は周知活動を行っている。演者と来場者がフラットであるその場は、子どもの感性を育むのに大切な時間と捉えている。賛同者を募ると共に、公演を重ね資金を蓄えていく。「いつできるかわかりませんが、必ず町田に作りたい」と話す。

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