【6月13日付社説】国民スポーツ大会/時代に見合った新しい姿に

 時代の変化に合わせ、開催意義や運営の在り方を再考し、必要な改革を進めることが重要だ。

 廃止を含め、在り方の見直しを求める声が相次ぐ国民スポーツ大会(国スポ、旧国民体育大会)について、主催者の一つ日本スポーツ協会が有識者会議を設置した。本年度中に提言をまとめる。

 終戦直後の1946年に始まった国スポは原則、各都道府県の持ち回りで開催されており、現在2巡目だ。ただ数十億円に上る開催経費の大部分は開催地が賄っている。選手の派遣費用なども自治体には大きな負担となっている。

 持ち回り開催により、各地に立派な競技施設や道路などのインフラが整備された。本県では95年、冬季と夏季、秋季の全ての大会を実施する「完全国体」が開催された。開閉会式の会場になった福島市のあづま陸上競技場など競技施設が整備され、選手や指導者の育成、競技力の向上につながった。

 国民の健康増進と体力向上、地域振興を図るという所期の目的は十分達成された。2035年からは3巡目に入る。国民のスポーツとの関わり方が多様化したなか、運営費などの課題を放置したまま継続させるのは無理がある。有識者会議は、過大な開催経費の圧縮や、スポーツの振興につながる運営方法を最優先に検討すべきだ。

 一定期間に多くの競技を集中的に行う現在の方式を改め、各競技の実施時期を分散させる「通年開催」、複数の都道府県での「広域開催」、隔年での実施などが検討される見通しだ。既に全国高校総合体育大会(インターハイ)は広域開催に移行しており、サッカー競技は今夏からJヴィレッジを中心に本県で毎年開催される。

 全国規模の大会開催には、各競技の基準に沿った施設、大勢の選手団や審判などが利用する宿泊施設などが必要だ。こうした受け入れ態勢を考慮し、競技ごとに広域的に開催するのは現実的な対応で、検討に値する。

 陸上やサッカー、バスケットボールなどの五輪競技以外に、国スポの正式競技には、なぎなたや弓道、銃剣道のほか、ボウリングや相撲もある。今年は公開競技として綱引きやグラウンド・ゴルフ、武術太極拳などが行われる。

 競技人口が少ないスポーツにとって数少ない全国規模の大会であり、選手らの大きな目標となっている。あまり知られていない競技を観戦してもらい、その魅力を伝える機会にもなってきた。

 開催地の住民らが観戦などを通し、スポーツの醍醐味(だいごみ)を体感できる大会を目指してほしい。

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