放射性セシウム、海洋生物移行せず 海水中微細粒子ほぼ体外へ

 福島大環境放射能研究所の高田兵衛(ひょうえ)准教授らの研究グループは、海水中の微細粒子に吸着した放射性セシウムのほとんどが、海洋生物に移行せずに排出される可能性が高いことを突き止めた。今後の海洋生物への放射性物質による汚染経路を把握する上で重要な情報になるという。

 高田准教授が12日の定例記者会見で発表した。研究グループは2019年から21年にかけ、本県沿岸の海水に含まれる微細粒子を採集し、この粒子に含まれる放射性セシウムの吸着状態を調べた。その結果、放射性セシウムの平均0.8%は生物に取り込まれやすい状態、2.1%は有機物に含まれている状態だったが、残りの97%は、海洋生物の体内に移行しにくい「強固に粒子に吸着している状態」だと分かった。

 これまで、海水に含まれる微細粒子に吸着しているセシウムは海洋生物の放射能汚染の一つと考えられていた。しかしこの結果によって、沿岸に生息する海洋生物が餌とともにセシウムを含む微細粒子を取り込んだとしても、ほとんどが筋肉など体内へは移行せずに排出される可能性が高いことが示された。研究成果は、4月に海洋科学の国際学術誌に掲載された。

© 福島民友新聞株式会社