「ズルして」歩数稼いでる? 長崎県の健康づくりアプリ 月300万歩の人も…続くいたちごっこ

月に300万歩近く歩くランキング上位者=5月31日午後3時44分時点(画像は一部加工)

 1日でこんなに歩けるの?-。長崎新聞の双方向型情報窓口「ナガサキポスト」に、長崎県が2023年2月から配信している健康づくりアプリ「歩こーで!」で“ズルして”歩数を稼ぐ人がいる疑いを指摘する投稿があった。調べてみると、県は不正が疑われる人は表示されないように定期的に対応しているが、新規や再登録者がいて、いたちごっこが続いているようだ。

 5月末、アプリ内の歩数ランキング上位者を見ると、1カ月で約300万歩に達している人がいた。厚生労働省の資料に合わせ、成人の歩幅を70センチと考えると、1日平均70キロ歩く計算。JR長崎駅(長崎市)から長崎空港付近(大村市)まで毎日往復すれば可能だが、地図アプリで確認すると片道約8時間半かかる。
 県国保・健康増進課によると、歩こーで!は1日10万歩までしかカウントされない。獲得ポイントも1万歩で20ポイントが1日の上限。ランキング上位でも直接の利益はほとんどない。ゲームや歩数に応じてポイントが得られる他のアプリの使用者が、歩こーで!に登録している可能性もあるという。
 同課は歩数が疑わしい人には直接連絡し、返信がない場合など表示から外す対応をしている。中には「仕事柄歩くことが多い」という回答もあったそうだ。異常な歩数が続く人は「自動でスマートフォンを揺らす機械での不正や誤作動の可能性もある」とみている。
 記者も試しに“振り子式”の機械を使ってみると、1時間で4千歩ほどカウントされた。同様の健康アプリは全国で普及。佐賀県の「SAGATOCO(さがとこ)」でも同じ事例が起き、長崎県と同じ対応をしている。
 一部の県民からは「モチベーションが下がる」という声もある。同課の担当者は「個人の倫理観に委ねるしかない。比べずに自分の歩数を見て健康づくりに励んでほしい」と呼びかけた。
 歩こーで!は23年度のダウンロード目標者数5万人を突破。本年度は、アプリ内のポイントで県民が特典を得られる協力店の拡大や生活習慣チェック機能の改善などに取り組み、7万人を目指す。

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