学力低下…元校長「ICTを使うほど学力が下がった」と指摘 教育者らの総会で語る「デジタル機器は使える必要はある」 医学データ示し「子どもたちはスマホで動画漬けになり、脳機能が低下している」

記念講演し、「NIEは先生も育つ」と強調した日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さん=12日午後、さいたま市浦和区の埼玉大学教育学部付属教育実践総合センター

 教育での新聞活用を進めている埼玉県NIE推進協議会(会長・戸部秀之埼玉大学教育学部長)の2024年度定期総会が12日、さいたま市浦和区の埼玉大学教育学部付属教育実践総合センターで開かれた。記念講演した元小学校長で、日本新聞協会NIEコーディネーターの関口修司さんは、国の学力テストの結果分析を基に「ICT(情報通信技術)のデジタル機器は使える必要があるが、使えば使うほど学力が下がることが分かった」と指摘した。

 総会では本年度の事業計画などを確認。実践指定校に埼玉大学付属小学校など11校の新規校と9校の継続校計20校を決定した。「今、NIEに求められる実践の方向性」のテーマで講演した関口さんは「子どもたちはスマートフォンで動画漬けになっており、脳の機能が低下している」とした医学データを提示。「せめて1日20分は新聞など多様な文章に触れる必要がある」と強調した。関口さんはまた、NIEに取り組んだことで読む力と書く力がついた結果とともに、9割の学校が教員の指導力が向上したと答えたと話した。

 総会には、推進協を構成する新聞・通信各社の代表者やアドバイザー、実践指定校の担当教諭らが参加。県教委とさいたま市教委から来賓を招いた。新しく会長に就任した埼玉大学教育学部長の戸部秀之氏は「新聞を広げると新しい世界に出会える。その大切さに気付く力を子どもたちに」と呼びかけた。

 総会に続くオリエンテーションでNIEの意義を話した顧問の赤池幹さんは「自分で答えを見つける時代。教えるのではなく、新聞を使って子どもたちと一緒に考えることで本当の学力を育んでほしい」と語った。

 実践指定校には新聞8紙が一定期間、無償提供され、授業などで実践に取り組む。総会後、アドバイザーの教師らによる説明会も実施した。

 24年度実践指定校は次の通り。

【新規校】(11校)

 埼玉大学教育学部付属小学校、鴻巣市立田間宮小学校、三郷市立早稲田中学校、行田市立忍中学校、川越市立砂中学校、熊谷市立三尻中学校、上尾市立上尾中学校、さいたま市立大原中学校、東京成徳大学深谷高校、さいたま市立浦和南高校、県立浦和第一女子高校

【継続校】(9校)

 行田市立太田小学校、鴻巣市立鴻巣南小学校、熊谷市立江南南小学校、さいたま市立与野本町小学校、鴻巣市立鴻巣中学校、同鴻巣北中学校、さいたま市立与野南中学校、埼玉大学教育学部付属中学校、県立八潮高校

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