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ロックバンド・Mrs. GREEN APPLEが6月12日、最新曲「コロンブス」のMVを公開した。
この内容に、公開直後から批判が殺到。翌日13日には、「歴史や文化的な背景への理解に欠ける表現が含まれていた」として公開が停止する騒動となった。
なお、この楽曲はコカ・コーラCoke STUDIOのキャンペーンソング。TVCMソングにも採用されている楽曲MVの、何が問題だったのか。
ミセスのメンバーが扮装し、類人猿と交流する「コロンブス」のMV
「コロンブス」のMVでは、ボーカルギターの大森元貴さんがコロンブス、ギターの若井滉斗さんがナポレオン、キーボードの藤澤涼架さんがベートーヴェンとして登場。
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MVは、海に浮かぶ孤島の邸宅を訪れた3人が、そこで類人猿に出会うシーンからスタートする。
MVを通じて類人猿たちとの交流が描かれるという内容で、ユニバーサルミュージックからのプレスリリースでは以下のように説明されていた。
MVでは大森元貴 (Vo/Gt)がコロンブス、若井滉斗 (Gt)がナポレオン、そして藤澤涼架 (Key)がベートーヴェンといった時代ごとに名を馳せた偉人たちに成り切り、もしも生きた時代の異なる偉人たちが一緒に旅をしたら?という想像の物語が描かれていく。その道中で500万年以上もの時を越えて出くわした類人猿たちとのホームパーティーが始まるというもの。
時代とともに移り変わったコロンブスの評価
冒頭のこの描写からも、いくつかの問題点が指摘できる。
まず、楽曲タイトルにもなっているクリストファー・コロンブスは15世紀、大航海時代にアメリカ大陸を発見した探検家として知られていた人物だ。
一方で現在では、アメリカ大陸はコロンブスが発見するまでもなく先住民が居住しており、その発見をことさら開拓精神の象徴や美談として強調するのは、非常に偏った西欧中心的な歴史観であるという批判も強い。
アメリカ大陸での虐殺行為や奴隷商人としての側面に重点を置き、その後に続く植民地支配のきっかけでもあり、決して偉人とは呼べない人物との見方や評価も少なくない。
なお、このようなコロンブスの評価は、近年のポップカルチャー領域でも実際に作品に落とし込まれている。
例えば『Fate/Grand Order』に登場するコロンブスは、ステレオタイプな勇敢な探検家ではなく、残忍な奴隷商人としての側面を大きく取り入れたキャラクターデザインだと言えるだろう。
際立つ「ヨーロッパの偉人」とそれ以外という対比
MVに登場するコロンブス以外にも、ナポレオンやベートーヴェンも、ヨーロッパ出身の人物。こうした西洋の歴史的な人物たちが、類人猿に人力車を引かせ、楽器の演奏や馬の乗り方を指導する。
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MVやプレスリリースからは、類人猿のモチーフ自体に未文明的な存在という以上の意味──例えば、それが実在した先住民たちを指すような歴史的な意図が込められている、と言い切るのは難しい。
しかし、そうした意図の薄さや屈託の無さこそが、「ヨーロッパの偉人」と、それ以外の未文明な存在という対比を際立たせている。
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「コロンブス」のMVは、西欧がその他を支配するという西欧中心主義、植民地主義を無自覚に肯定する作品であると言っていい。
MVに合わせて(地理的に東洋であるはずの)日本のバンドメンバーが歌うポップなメロディーが流れる様子は、とても衝撃的ですらある。
ユニバーサルミュージックが声明を発表
YouTubeのクレジットでは、Planning Directorとして大森元貴さんの名前が表記されていたほか、公開停止の声明ではEMI Recordsと所属事務所Project-MGAで制作されたと説明(外部リンク)。
声明では「今後はこのような事態を招くことのないよう細心の注意を払い、皆様にお楽しみいただける作品をお届けしてまいります」と締めくくられている。