天皇杯で目にした流通経済大の興味深い伝統。川崎DF佐々木旭がソニー仙台のベンチに懸け寄った理由とは?

[天皇杯2回戦]川崎 2-0 ソニー仙台/6月12日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu

天皇杯連覇を目指す川崎は今大会初戦として2回戦でソニー仙台と対戦し、山田新とマルシーニョのゴールで勝利を収めた。

モチベーション高く臨んできたソニー仙台の守備を崩し切れない時間帯もあったが、無事に3回戦へコマを進めた形だ。

そんなゲームで終了のホイッスルが鳴った後、ソニー仙台のベンチへ駆け寄ったのが、この日はCBを務め、好フィードで58分にはマルシーニョのゴールを導き出した佐々木旭だ。

その訳を試合後に聞くと、佐々木の出身大学である流通経済大サッカー部の興味深い伝統を教えてくれた。

「ヨシモリキョウヘイさんという先輩がいたんです」

メンバー表を見ると29歳のMF吉森恭兵と前所属が流通経済大と記してある。ただ、24歳の佐々木にとって、吉森は直接会ったことのない先輩だという。ではなぜ、佐々木は、試合後に挨拶へ駆け寄ったのか。

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「流経の寮や練習場などのトイレにはJリーグとJFLへ進んだ選手たちの写真がバッーっと飾ってあるんです。いつもそれが目に入ってくるので、学生たちは先輩がどのチームにいるか分かっている。なので学生時代に被ってないんですが、あ、キョウヘイさんだと、試合前から気付いていたんです。

直接、お会いしたこもともないですし、話したこともないのですが、(監督の)中野(雄二)さんにはしっかり先輩には挨拶をしに行くようにと言われてきました。だから試合前にはしっかり先輩がいるのかを改めて確認するようにしています。

(壁に張ってある顔写真は)70人くらいですかね。でも全員覚えていますよ。皆さんの名前言えますから。同部屋同士で問題を出し合ったりもするんです。だからプロになったあとも、被っていなくても、スカウティングなどで名前が出てきたらパッと気付くんですよね」

天皇杯のひとつの行動の裏にあった興味深いエピソード。こうした伝統や選手のつながりは心温まるものがある。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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