もはやフニャフニャ、軟体動物? 経済財政「骨太の方針」の実態

ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務めるラジオ番組「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、6月13日の放送では、今週公表された経済財政の「骨太の方針」案について経済評論家の加谷珪一が解説した。

鈴木敏夫(文化放送解説委員)「政府は今週火曜、経済財政諮問会議を開きました。社会保障を持続させるために1%を安定して上回る経済成長が必要であることなどを示しました。経済財政運営のガイドライン、長野さんの嫌いな言葉『骨太の方針』案を公表しています」

長野智子「『女性版骨太の方針』というのがあって、どこが骨太なの、って(笑)。骨粗鬆症ですか、って」

鈴木「かつて宮沢(喜一)財務大臣が、『財政は我々がちゃんとやります。あなたは骨太の方針で』と言ったのが『骨太の方針』になって、そのまま言葉として残って毎回『骨太の方針』と言うけど、みんな違和感を持って受け止めてしまう。この方針案、人口減少が加速する2030年代以降でも財政や社会保障を持続させるために必要な条件だと。実質GDPの成長率1%を上回る経済を掲げた、このような内容でございます」

長野「今年の骨太の方針、どう思われますか?」

加谷珪一「いま骨粗鬆症なんて話が出てきましたが、骨太ではなく、さらに言うと骨が華奢になってしまって、なくなって軟体動物になってしまったかな、という感じなんですよ」

長野「既に骨がない(笑)」

加谷「ただ一方的に悪いばかりではなくて。たとえば今、1%の成長目標という話がありました。安倍政権の時代なんて『2%以上』と言っていて、絶対無理なのにそれを前提に年金の計画を立てるなどしていたんです。それからすると1%という数字を出してきたのは、現実を見据えているかなと。がっしりとした『力強くいくぞ!』という目標ではないのですが、現実には歩み寄ったかな、という感じはします」

長野「とはいえ可能なのだろうか、という部分もけっこうありますね」

加谷「そうですね。前から言われていますけど日本って企業の生産性がすごく低い。仕事にすごく時間がかかる、合理形成に時間がかかる、無駄な手続きがある。ちゃんとデジタル化をして、女性や能力ある人を活用しましょう、など、前から言われていることをちゃんとやれば1%成長できると思います」

長野「はあ~!」

加谷「ただそれがなかなか実現できてこなかった。この骨太の方針では確かに、デジタル化を推進しましょう、女性の賃金を上げましょう、下請けたたきをやめましょう、といったメニューが並んでいるので、正しいことは書いてあるんです。でもこれって岸田政権発足当初から『やらなきゃダメですね』と言われていたことが並んでいるだけなので、現状追認かなと。骨太ではなくフニャフニャかな、というのはそういう意味です」

長野「さっき『(大竹まこと)ゴールデンラジオ』でも議論していましたけど、企業の内部留保や現金、預金、というのはどう思われます? すごくたくさんあるという……」

加谷「やっぱりダメなんですよ。本来、企業というのは過剰にお金を貯めるのではなく、利益が上がったらその分は将来の利益成長のために先行投資をする、というのが本来のあり方。企業の経営者、特に公にお金を集めている上場企業の経営者が積極的に打ち出さなければいけないんですけど、残念ながら日本は30年間、現状維持に終始してしまって、前向きな投資を怠ってきたんです。デジタル化も進まないし、人材の登用も進まない。内部留保の問題は改善していかないといけないと思います」

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