『Re:リベンジ』“海斗”赤楚衛二はもはや悪役そのもの タイトルに込められた深遠なテーマ

ここまでダークサイドに落ちてしまった主人公がかつていただろうか。最終回を目前にしてもなお、海斗(赤楚衛二)の闇は濃くなるばかりである。権力と野望に囚われた彼は、医療ミスを隠蔽し、真実を歪めることさえ厭わなくなっていった。『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)第10話は、妹の美咲(白山乃愛)を失った悲しみに明け暮れていた陽月(芳根京子)が、真実を明かすためについに動き出す展開となった。

陽月は、天堂記念病院の医師である郁弥(錦戸亮)から衝撃の事実を聞かされる。美咲は手術中の医療ミスが原因で亡くなった可能性があり、その証拠を理事長である天堂海斗がもみ消したというのだ。真相を確かめるべく海斗に会おうとする陽月だが、郁弥は来週の週刊誌にこの事件の記事が掲載されるため、それまで待つべきだと諭す。

しかし、翌週発売された週刊誌には記事は見当たらなかった。この時点で、前回血まみれで倒れている紗耶(見上愛)を目にしている視聴者は嫌な予感を抱いたのではないだろうか。陽月は紗耶に会いに行くが、彼女は1週間前にビルから飛び降りて死亡したと聞かされる。ドラマが始まった当初は「紗耶と陽月のどちらを選ぶのだろう?」などと思っていたが、まさかどちらをも不幸にしてしまう海斗の行動に驚かされる。

一方、海斗は「心臓血管外科プロジェクト」を着々と進め、新病棟の建設にも着手していく。医療ミスの真相を追い求める陽月とは対照的に、海斗は黒く染まった自らの野望に向かって突き進んでいた。陽月は紗耶から全ての真相を聞いたと告げ、医療ミスの隠蔽や紗耶の気持ちを利用したことを追及する。しかし、海斗はすべてを憶測だと一蹴し、陽月に口止めを求めるのだった。

追い詰められた陽月は、郁弥に相談し、緊急の理事会で海斗を問い詰める計画を立てる。郁弥の存在がなければ、この病院は本当の意味で救いのない展開になっていただろう。その際、医療ミスに関与した若林(橋本淳)の証言が不可欠だと考えた陽月は、彼の協力を取り付けようとする。ところが若林は陽月に真実を明かすものの、肝心の理事会での証言には現れない。

「海斗は今、何を守ろうとしてるの? 真実を歪めてまで。その椅子に座り続けることがそんなに大事?」と陽月に糾弾された海斗だが、もはやその声は海斗には届いていなかった。権力と野望に取り憑かれた海斗は、真実よりも自らの地位を守ることに必死になっている。一方で、郁弥の正義感が増していく。この件について陽月とともに動いているであろう郁弥を天堂記念病院から追放したい海斗は、皇一郎(笹野高史)に相談し、より今の体制を盤石なものにしようとする。

そんな中、理事会に現れたのは若林だった。美咲が亡くなったのは、手術中の医療過誤が原因であったと思われることを明かし、その隠蔽に加担したことを理事会で発表する。その隠蔽を支持したのが海斗だったことを証言した若林の勇気ある行動は、真実を明らかにするための大きな一歩となるだろう。

権力と野望に溺れ、真実を歪めてまで理事長の座にしがみつく海斗の姿は、もはや悪役そのものだ。本作のタイトル『Re:リベンジ‐欲望の果てに‐』は、ただの復讐劇ではなく、“権力の座”を目指す登場人物たちの「報復の連鎖」という意味も込められているそうだ。(※)ストレートに読めば、何らかのリベンジの対抗としてさらにリベンジが起こるということだが、まさに物語は今その渦中にある。

また『Re:リベンジ‐欲望の果てに‐』というタイトルは、単なる復讐劇を超えた、深遠なテーマを内包している。サブタイトルの「欲望の果てに」は、本作のテーマでもある「自らの器を超える欲望を果たそうとするとき、人は一体どうなるか?」を指しているとのことだが、今の展開で言えば、この欲望に取り憑かれた人物こそ、海斗であると納得がいく。

海斗の堕落と、陽月や郁弥の正義の追求が激しくぶつかり合う中、いよいよドラマは最終回へと突入する。その結末は、欲望と正義の衝突に対する一つの答えを提示してくれるに違いない。リベンジの連鎖が辿り着く先には、一体何が待っているのだろうか。

参照
※ https://www.fujitv.co.jp/re-revenge/news/news04.html

(文=すなくじら)

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