市民とつながる”タウンミーティング” 続いてます!「街は“市民目線”で…」丸谷聡子・明石市長

丸谷市長「笑顔を絶やさずに過ごるのは、市民のみなさんと一緒に歩んでいるから」ブレずに平常心を保つ秘訣だ

就任から1年を迎えた兵庫県明石市・丸谷聡子市長のテーマは「共創元年」。

「子どもを核にした街づくり」「SDGs未来都市」など、泉房穂前市長の打ち出した路線を継承している。

【画像】まるちゃんミーティング~こんな感じで進みます

重要施策のひとつとして、昨年(2023年)5月の就任直後に「市民とつながる課」を立ち上げ、毎月1回の”タウンミーティング”を通して市民と対話し、情報を共有する体制を作った。これまで14回開催し、のべ771人が参加。市の施策にもつながっている。丸谷市長に意気込みを聞いた。

丸谷市長は、「明石市民30万6千人の幸せとは何かを考え、市長が誰であっても市政を先送りせず、最善の方向を見出している。この1年の点数は市民の皆さんが決めること。私自身、毎日毎日全力でやってきたのは間違いない」と振り返る。

そして、「特にタウンミーティングは、市民の生の声をダイレクトに受け止める絶好の機会。明石市の方向性を、逆に市民から教えていただける」と自らが楽しんで臨み、丸谷流スタイルを貫く。
今春、市民とつながる課の陣容をパワーアップした。意見を引き出し、まとめあげる“ファシリテーター”として、市が担当専門職員を2名採用、タウンミーティングで市民と接していく。
そして、さまざまな課題を、多くの関係先と解決していく「産・官・学」協同を進める。

競争ではなく"共創”。丸谷市長は「私の得意分野は、いろんな人や物事をつなげること」と話す。市長就任前、議員活動と並行して公設民営のフリースクールの設立や生態系の保全などに取り組んできた自負がある。

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5月25日、明石市西部の大久保地区で開かれた「マルちゃんカフェ」。いままで行政機関が開催したタウンミーティングでは、意見交換という名目だが、限られた人しか参加できず、一方的な“意見の押しつけ”の印象が強いとの声が多かった。
ミーティングでは、議論内容や提案を、絵や図形などのグラフィックを用いてリアルタイムにまとめる「グラフィックレコーディング(グラレコ)」を導入している。
また参加者の緊張を解くために、車座をイメージし、大きな段ボール紙を円形に切り抜き、輪になって着席した6人の膝の上に置き、メモ書きもできる「えんたくん(円卓)」も用意し、肩ひじ張らない環境づくりに努めた。

この日参加した大学4年の女子学生は「生まれ育った明石のまち、人が増えて、人どうしのつながりが深くなった。暮らしやすいし、これからも住み続けたい」と印象を語る。また「子育て支援の充実が明石市の人気につながっている。でもその分、お年寄りが取り残されているのではないか。急成長する明石だからこそ見えてきた課題もある」と指摘した。
30代の男性は、「市民目線のまちづくりは明石市の自慢」と述べた。一方で、「人口増加は、マンションなどでのコ ミュニティで、人とのつながりが希薄になる分、どのような形で交流するかを考えなければならない」という危惧もあるという。さらに「特にに大久保地区は若い人が同時に移住するケースが多く、その分、同時に高齢化が進むことも考慮すべき」とも話した。

丸谷市長は「丁寧に進める部分とスピード勝負をかける部分、緩急をつけながら取り組み、言葉を尽くす」ことを心掛けている。
そして、「対話って、時間がかかりそうに見えるが、課題が明らかになればスピーディーに解決するケースもある」と自信を持って話す。タウンミーティングは、障がい者、高齢者、子育て世代など幅広いジャンルで募り、子ども会議・若者会議の開催を経て現在は地域別で行っている。明石市のみならず全国的な課題である「ごみ減量化」については、市役所内の担当課からの要望が叶って実現し、紙回収専用のリサイクルボックス設置につながった。

かつて市民向けのワークショップを開いたことがある。神戸市の西、瀬戸内の一角を占める明石市は、JR山陽本線が東西に貫くが、ある地域では線路の南北で住民ニーズが異なった。公共施設の建設をめぐり、南側の住民から「私たちのエリアに作ってもらえると助かるが、北側と分散するような施設づくりがいいのではないか。土地の活用法も考えていきましょう」との意見が挙がった。往々にして自分の居住エリアの利便性だけを期待することが多いとされるが、丸谷市長は住民意識の高さに感心しきりだった。

泉前市長の後継として、何かと比較されることも多く、プレッシャーも大きかった。昨春の市長選、初当選直後に「火中の栗、だから拾った」と述べた丸谷市長。「時々、火中でその熱さも感じながら、やけどしそうになりながらも、笑顔を絶やさずに過ごせているのは、市民のみなさんと一緒に歩むことができたから」と微笑む。

泉前市長は退任時、ラジオ関西の取材に対し、「もう首都圏で『神戸の西のほう』とは言わさない。明石は明石なんだから」と話した。今度は丸谷市長がこれを土台に「市民の目線を“ものさし”にした街づくり」を挙げ、2年目の市政のかじを取る。

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