ドーピング違反に揺れた孫楊はパリ五輪出場を諦めていない? 資格停止期間が終了→イタリア国際大会出場の可能性を海外報道【競泳】

にわかには信じがたいニュースが飛び込んできた。

ドーピング問題に揺れる中国競泳界のスーパースター、孫楊(スン・ヤン)。2018年9月のドーピング抜き打ち検査で妨害行為に及び、その後およそ3年半に及ぶ超長期の審理を経て、21年6月に「4年3か月」の資格停止処分が確定した。その停止処分が先月28日に終了し、孫楊は国内メディアのインタビューで「長くて大変な4年間だった。これからは競技に復帰して、新たな旅と挑戦を続けたい」と決意表明。さすがに7月26日に開幕するパリ五輪へのエントリーは事実上不可能と見られていた。

ところが、である。専門メディア『Swim Swam』の著名な記者であるブラデン・キース氏が現地6月12日に自身のXを更新し、「孫楊がセッテコリで競技に復帰して、五輪出場の最後のチャンスを掴むかもしれないという噂がたくさん流れている」と伝え、「主催者側は確認していないが、否定もしていない」と続けたのだ。

セッテコリとは、6月21日から23日までイタリアのローマで開催される国際大会「セッテコッリ杯」。すると中国メディア『捜狐体育』が「孫楊はイタリアの大会を復帰戦に決めたのかもしれない」と反応し、「パリ五輪の選手登録期限は6月26日。大会は23日に終了するため、孫楊が標準記録を突破するなど条件を満たせば理論上、エントリーには間に合うことになる」と説明した。

もちろん、ハードな自主トレを積んでいたとはいえ、資格停止が明けたばかりで現在32歳の孫楊がどれだけのパフォーマンスを発揮できるかは未知数。それ以前に、『捜狐体育』は唯一にして最大のハードルは中国水泳協会の厳しい目だと指摘する。

「まず何よりも、資格停止中だった孫楊は4月末に開催された国内選抜大会に出場していない。中国協会は選抜大会に不参加の選手は代表メンバーとして認めないのがルールだ。さらに、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)から1年以上の資格停止処分を受けた選手は二度と代表メンバーに選ばないという内規もある。現実的に孫楊が五輪代表に選ばれる可能性はかなり低いと言えるだろう」
中国国内ではいまだ厚い支持を得ている人気者だけに、同メディアは「もし五輪の参加標準記録をいずれかの種目で突破したならば、孫楊を後押しするファンの声は大きくなるかもしれない」とも記している。

ロンドンとリオの五輪で計3つの金メダルに輝き、1500メートルの世界記録(14:31.02)を持つ孫楊。はたして本当にイタリアでの国際大会に姿を現わすのか。それとも単なる噂や憶測に過ぎないのか。動向が注目される。

構成●THE DIGEST編集部

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