【介護休業】制度活用し離職防止を(6月14日)

 家族の介護に伴う離職の防止などを目指す改正育児・介護休業法が来年4月に施行される。従業員への介護休業など仕事との両立支援制度の周知、利用の意向確認が事業主の義務となる。団塊世代の高齢化が進む中、親の介護に関わる現役世代が増えると予想される。制度を利用しやすい職場環境の整備は急務だ。

 従業員から「介護に当たる必要が生じた」と申し出を受けた場合、事業主は社内の両立支援制度の内容を知らせ、利用の希望を把握するよう求められる。従業員へ両立支援制度に関する研修などが義務化され、介護中のテレワークは努力義務となる。

 総務省の2022(令和4)年の調査によると、家族の介護・看護を理由とした過去1年間の離職者は全国で10万6千人に上り、5年前より7千人増えた。県内は1600人で700人減ったものの、離職者全体に占める割合は2.2%で全国平均を0.3ポイント上回っている。

 介護を始めて離職するまでの期間は短い傾向にある。厚生労働省による2021年度の調査で「半年未満」は約60%に達した。離職する前に利用したかった制度として、約60%が家族1人につき約3カ月(93日間)の休業が認められる「介護休業」、約40%が家族1人の場合は年間5日、2人以上は10日まで休める「介護休暇」を挙げた。国の制度を有効に活用できず、介護が必要になってから短期間で離職を決断せざるを得ない実態が浮かび上がる。

 日頃から社内で介護関連制度の内容を共有し、理解を深める必要がある。介護休業期間の延長や複数回の分散取得など、利用しやすくするための企業独自の工夫も求められる。

 県内1400事業所を対象にした県の2023年の労働条件等実態調査(有効回答783事業所)では、介護休業取得者がいる事業所の割合は8.7%(68社)にとどまった。県は昨年度、企業向けの女性活躍、働き方改革支援奨励金に「介護休業の取得」を加えた。1人当たり5日以上で10万円、1カ月以上で20万円が交付される。初年度の申請は5件だった。取得を促す国の助成もある。こうした制度の存在を経済団体などを通して広報する取り組みも重要になる。(三神尚子)

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