中国伝統の「変面」、神戸の中学生が一目ぼれ 門外不出の技…師匠探し出し、初の日本大会へ

変面に打ち込み、全国大会に臨む中西凰華さん=神戸市灘区高徳町

 門外不出で一子相伝とされる中国の伝統芸能「変面」に、神戸の女子中学生が打ち込んでいる。5歳のとき、手や扇子で顔を隠し、瞬時にお面を変える「変面師」の魅力に一目ぼれ。技を伝承してくれる師匠を全国から探し、10歳で学び始めた。技や舞に加え、華やかさを支える体力づくりにも取り組み、今月15日には日本大会に初めて挑む。「多くの人に感動を与えたい」。中国で開催される世界大会への切符を懸けて、練習に励んでいる。(門田晋一)

 神戸中華同文学校中学部2年の中西凰華(おうか)さん(13)=灘区。2016年、南京町(中央区)であった中国の旧正月を祝う「南京町春節祭」で変面を初めて見た。「迫力がすごい。自分もやりたい」。同祭に出演した中華同文なら変面を学ぶきっかけが見つかるかもしれないと、両親を説得して小学部に入学した。

 各地で開かれる古典劇「京劇」や、太極拳のイベントなどに足を運び、伝統舞踊にも触れた。その中で変面が持つ、人を引き寄せる力を再確認し、思いはさらに強まった。ただ門外不出の技は簡単には教えてもらえない。各地の変面師らに手紙を送り、電話も架け続けた。

 当初はあまり相手にされなかったが、小学2年の夏休み、九州の団体が話を聞いてくれることになった。担当者は中西さんの熱意を感じ、二つの条件を示した。3年かけて体を鍛え、振り付けを1回見ただけで覚える-。面の変化の素早さばかりが注目されるが、マントなどの重たい衣装で踊り続ける体力と舞の技術が欠かせない。中西さんは中国語を磨くことも決意し、特訓の日々が始まった。

 3歳から続けるバレエのレッスンなどに加え、少林拳を習い、休日は父親と水泳や、壁面などを登るボルタリングでも汗を流した。小学3年生のときには、中国語スピーチの全国大会で最優秀に輝くなど、文武両道を貫いた。

 約束の3年間を終え、再び九州に。「私のことを忘れられていたらどうしよう」。不安を抱えながら訪問すると、関東を拠点に活躍する変面師・未来さんらが出迎えてくれた。無事に弟子入りを果たし、現在はオンラインなどで基本動作を中心に学ぶ。

 昨年、今回と同じ大会の西日本予選に招待され、変面のほか中国語のスピーチを披露し、特別賞を獲得。今回は中国の歴史や文化などの一般教養のテストもあり勉強にも一層精を出す。「変面、スピーチ、一般教養全てに自分のベストを見せたい」と意気込んでいる。

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