「あーちゃん号」輪島の力に 木村さん夫妻ら、娘の遺志つなぐ

久之浜地区を見下ろす高台で車いす「あーちゃん号」を囲む木村さん夫妻。左は岬さん=いわき市

 いわき市の木村喜隆さん(69)、美奈子さん(66)夫妻は14日、亡き娘の遺志を継いで20年ほど続けている慈善活動の一環で、能登半島地震で被災した石川県輪島市に車いす1台を贈る。東日本大震災で被災した木村さん夫妻は「地震と大火に襲われた輪島市の光景は、13年前のいわきを思い出させた。復興を信じ前を向いて」と願っている。

 久之浜地区にあった木村さん夫妻の家は地震と津波で全壊した。続く大火で焼け野原と化した同地区は現在、沿岸部にできた防災緑地に守られ、多くの住民が生活再建を果たしている。

 木村さん夫妻は震災前も悲痛な思いをした。次女麻美さんが高校2年だった2001年6月12日、がんで16年の生涯を閉じた。所属した剣道部のロッカーに缶飲料のプルタブ2袋分が残されており、夫妻は娘が車いすを贈るために集めていたことを初めて知った。

 「中学時代は青少年赤十字活動に取り組み、世界平和や福祉に関心があった。麻美の遺志を引き継ごう」

 友人の提案を受け、麻美さんの愛称にちなみ「全国に車椅子あーちゃん号を贈る会」を結成した。あーちゃん号は、赤いフレームに花柄のいすの特注品。同会によると、1台を買うのに約300万個のプルタブが必要で、年1台のペースで贈り続けてこれまで12都県に計16台を届けた。

 能登半島地震後、いわき市社会福祉協議会が輪島市で支援活動に当たった縁から、17台目の贈呈が決まった。木村さん夫妻は「全国からの温かいエールとともに娘を嫁がせる気持ち。大切に使ってもらいたい」と話している。

 夫妻の友人で一緒に会を発足させたいわき市の歌手岬はな江さんは、歌謡ショーで各地を巡る際に活動への協力を呼びかけている。「あーちゃんの生きざまを伝えるため、全国47都道府県に車いすを届けるのが目標」という。問い合わせは、岬さんが園長を務める福祉施設「岬学園かもめパン工房」(電話0246.82.4414)へ。

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