迫る再稼働、巨大防潮堤 女川原発2号機 東北電、安全対策工事が完了 報道陣に設備公開

防潮堤を背に安全対策について語る阿部所長

 安全対策工事が完了した東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の2号機は9月にも再稼働する。東日本大震災発生後、東北地方の原発が稼働するのは初めてとなる。東北電力は13日、安全対策設備を報道陣に公開した。

 「安全性の向上に継続的に取り組んでいく」。海抜29メートルまでの高さがある巨大な防潮堤を背に、女川原発の阿部正信所長は強調した。原子力規制委員会の基準に適合する安全工事を2013(平成25)年から11年間、約5700億円をかけて実施した。防潮堤は東日本大震災時に襲来した約13メートルの津波を大幅に超える23.1メートルの津波を想定。全電源を失っても核燃料の冷却を続けられるように高台に1万トンの淡水と大容量送水ポンプ車、電源車などを配置した。

 耐震性のある原子炉建屋には蒸気で動く注水系ポンプなどを設けた。事故発生時に建屋爆発を防ぐため、充満した水素を酸素と結合させ水にする装置を19台置き、建屋の気体を放出する際に環境への影響を最小限に抑えるフィルター付きベント装置も配備した。主な安全対策は【図】の通り。

 報道陣には安全対策工事のうち10カ所を公開した。能登半島地震から見えてくる教訓があれば追加で生かしていく方針も示した。

 ただ、安全設備が多数新設されたものの震災から13年余りが過ぎ、ずっと止まっていた女川原発の技術系社員約500人の4割が原発の運転に携わった経験がない。「ヒューマンエラー」をいかに防ぐかが課題で、シミュレーターでの訓練を重ねている。

※女川原発2号機 1995(平成7)年7月28日に営業運転を開始した。定格出力は82万5千キロワット。東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉。東日本大震災で津波の被害を受けなかったが、今年5月まで安全対策工事を続けてきた。7月に燃料を原子炉に入れ、9月に原子炉を起動、同月中に発電を再開する再稼働へ進み、10月に営業運転を開始する方針となっている。

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