学校再編計画に「待った」 佐世保・吉井地区の2小学校 寝耳に水の「2年後統合」…埋まらぬ溝

吉井北小(右)と吉井南小の再編計画に関し、保護者らの不安が相次いでいる=佐世保市吉井町

 長崎県の佐世保市教委が検討する市立学校の再編で、2小学校の統合を計画する吉井地区の保護者や住民が待ったをかけている。市教委は1月、2年後の2026年度に新学校としてスタートすることを初めて示したが「寝耳に水。準備期間があまりに短過ぎる」と声が上がっている。市教委は今のところ統合時期を変更する考えはなく“溝”は埋まっていない。

 市教委のスケジュールでは吉井北小と吉井南小を統合し、南小の校舎を活用する。24、25年度は統合に向けて、校名や校歌の決定のほか通学環境の整備などの準備を進める。市教委は再編の必要性については20年度から段階的に地域と協議を重ねていたが「26年度統合」は1月まで住民に提示していなかった。
 特に不安を募らせているのは通学距離が長くなる北小の保護者。北小校区の保護者が実施したアンケートでは、回答した41世帯のうち22世帯が「再編計画や環境整備が不十分のため早過ぎる」とした。北小-南小間の距離は3キロ超あり、最も通学距離が長い児童は4キロを超えることになる。途中には人目の少ない道もあり、安全な通学路の整備やスクールバスの問題、学童の受け入れ、跡地活用などクリアしていく課題がいくつもある中、保護者らには開校時期ありきで見切り発車になりかねないと懸念が強い。子どもが北小に通う鴨川志紀美さん(42)は「犠牲になるのは子どもたち。納得できる具体的な対策が完了するまで統合は待ってほしい」と求める。
 市教委の説明も保護者らの不信感を招いた。市教委が再編の検討を始めた19年度時点で吉井地区の優先順位は低かったが、再編計画のトップバッターに急浮上。市教委は3月下旬の地元説明会で、校舎改修などの事業費を考慮して着手順を決めたとした上で「(吉井地区は)校舎の建設を伴わずに再編できる」などと発言した。住民には「市の財政事情で決められた順番」と映り、住民の立木昭夫さん(64)は「本当に子どもや地域のことを第一に考えてくれているのか」と疑問を投げかける。
 ただ、再編の目的の一つである児童数は減少が続いている。市教委によると、本年度の児童数が67人の北小は近く、異なる学年が同じ教室で机を並べる「複式学級」になる可能性がある。市教委は望ましい学校規模を維持する重要性について「人との関わりを通し多様な考え方を学ぶことが求められる。人間関係の固定化も避けられる」と理解を求める。児童数192人の南小と統合した場合は一定期間、クラス替え可能な児童数を維持できると推計している。
 市教委は「保護者や地域の意見を聞きながら検討し、最善策を提示したい」としており、今後の地元への説明が注目される。

© 株式会社長崎新聞社