「身構えた」 佐世保・小6女児同級生殺害 発生直後のクラス担当 教員と当時の児童が語る20年

事件当時や今の教育現場について語り合った栗嵜さん(左)ら=佐世保市内

 2004年に長崎県佐世保市立大久保小で起きた小6女児同級生殺害事件は、一因としてネット上でのトラブルが指摘されている。事件から20年の月日が流れ、子どもたちを取り巻く環境はどうなり、大人に求められるものはいったい何なのか-。事件があった年、児童や教員として大久保小に在籍した3人に意見を出し合ってもらった。
 参加したのは被害者と加害者の同級生、森田耕平さん(32)と、事件直後にこの学級を任された栗嵜和正さん(64)と牧島啓晃さん(42)。東京で教員をしている牧島さんはオンラインで参加した。
 牧島さんは事件が起きた6月1日、非常勤講師として別の小学校に勤務していた。加害少女らの担任が休養することになり、10日から大久保小の6年生を受け持つことに。「身構えて大久保小に行った。不安でやっていけるか心配だった」とかつての心境を吐露した。
 栗嵜さんは大村市の県教育センターに勤務していたが、事件後、大久保小への転勤を告げられ、7月7日に赴任。担任として、牧島さんと二人三脚で子どもたちに全力で向き合った。
 世間やマスコミからの視線にさらされて学校生活に身が入らない6年生。前に進んだ転機の一つは同年10月のYOSAKOIさせぼ祭り。栗嵜さんは「何だったらこの子たちが今、本気になって取り組める目標になるだろうか」と考えていたところ、7月末、新聞でよさこいの締め切りが迫っているという記事を見た。
 「これだ!」と思い、子どもと保護者に相談して応募した。祭りでは感動賞を受賞。副賞のジャガイモは被害女児の好物だった。校内バザーで販売し、得た収益を新潟県中越地震の被災地へ送った。
 凄惨(せいさん)な事件によって苦しんだり悲しんだりした一方、前向きに学校生活を取り戻した04年から20年が経過。現在も教員として子どもたちと向き合う牧島さんと栗嵜さんは「人と人とが直接関わる大切さを伝えていきたい」と口をそろえた。
 子育て中の森田さんは「ネットやゲームはコミュニケーションツールになっていて否定はできないが、物理的な人との関わりを家族で大事にしていきたい」と話した。
 「善悪の区別ができ、人間らしく生きようとする心が必要」と栗嵜さんは強調する。事件を振り返り、それぞれがより良い未来に向かえるよう考えている。

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