なぜ戻さない!?「ショッピングカート」が映す米国社会とは

By 佐藤まきこ

米国には「ショッピングカート理論」があります。スーパーや小売店などで使うショッピングカートを、駐車場にある自分のクルマまで使った後、カート置き場に返すかどうかは、その人の道徳心や自制心を試すものであるという見方です。

↑迷惑じゃない?

そんなショッピングカートを戻すかどうかを巡り、ちょっとした論争が勃発しています。

論争の発端となったのは、カリフォルニアの女性が投稿した動画。彼女は「私はショッピングカートを戻しません。私のことを好きなだけ批判していい。でも自分の意見を譲るつもりはない」と宣言しているのです。

彼女がこれだけショッピングカートをカート置き場まで戻さない理由は、子どもの安全を守るため。子どもと一緒に出かけたとき、親がカートを返しに行っている間、クルマには幼い子どもだけが残されることになってしまいます。そのため、彼女はショッピングカートはカート置き場に戻さないと主張しているのです。

確かに米国では子どもの誘拐や人身売買などもあり得るでしょう。この動画は1200万回以上も再生され、批判が殺到。「たとえ小さな子どもであっても、親はカートを返せる」という人々がほとんどのようです。しかし彼女は、同じように「安全のためにショッピングカートを返さない」というコメントを数千件も受け取ったと主張しているのです。

「安全だと感じたら、カートを返却してください。そうでなければ、自分の直感を信じて自分と家族の安全を守ってください」と彼女は語っています。

一昔前に比べると、日本でも物騒な事件を耳にする機会が増えています。子どもや自分の安全のために、社会のルールを守らない人が増えてしまったら、それは悪循環の始まりになってしまうかもしれません。

【主な参考記事】

USA Today. ‘You can judge me all you want’: California mom’s refusal to return shopping cart goes viral. June 5 2024

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