東大、授業料値上げは「検討中」総長がコメント

東京大学

東京大学は2024年6月10日、授業料値上げに関する報道について、藤井輝夫総長のコメントを発表した。授業料の改定を検討していることは認めたが、値上げがすでに決定されたかのような報道には「不正確な情報もある」とし、検討状況や考えをあらためて説明している。

東京大学をめぐっては5月15日、一部報道が年額53万5,800円の授業料について、最大で約10万円増の年額64万2,960円とする可能性を報じ、その後も授業料値上げの検討や可能性を伝える報道が相次いでいた。

「授業料の値上げに関する報道について」と題した藤井総長のコメントでは、授業料に関する報道について「すでに『決定』されたかのような不正確な情報もある」と指摘。そのうえで、限られた財源を活用して、学生の学習環境を維持・改善する費用を安定的に確保するため、過去3年にわたりさまざまな施策に取り組んでおり、国立大学法人化以降20年間据え置いてきた授業料についても改定を検討していることを明らかにした。

「もし値上げする場合には、経済的困難を抱える学生への配慮は不可欠」とも明記。授業料免除の拡充、奨学金の充実など支援策もあわせて実施するための具体的な仕組みも検討しているとした。

今後に向けては、「今月に予定されている学生のみなさんとの総長対話などをはじめ、東京大学のありかたをめぐる学内外からのさまざまな意見にも耳を傾け、大学の将来のために、いまなにを具体的にすべきかを慎重に見きわめていきます」とコメント。対話の中で検討案も示して共有すること、決定した方針は速やかに公表予定との考えも示している。

東京大学が授業料の値上げを検討していることに対しては、学生を中心に反発が強まっており、反対集会の開催、授業料値上げ検討の取止めを求める学生投票実施などの動きもある。

国立大学の授業料は、2004年の国立大学法人への移行後、文部科学省が示す標準額(年額53万5,800円)を基準として、2割までの上乗せが認められている。現在、東京工業大学、千葉大学、一橋大学などが、標準額を上回る授業料を設定している。

奥山直美

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