舘ひろし×成田悠輔 「自分のキャリアの中で完璧だったこと、あります?」舘の逆質問にいつも饒(じょう)舌な成田が悶(もん)絶

経済学者の成田悠輔がMCを務める対談番組『夜明け前のPLAYERS』。第17夜のゲストは舘ひろし。映画『帰ってきた あぶない刑事(デカ)』の公開でいま最も注目されるイケオジだ。1986年のテレビドラマ『あぶない刑事』(あぶデカ)から38年間、ダンディーな刑事・鷹山敏樹を演じてきた舘自身、日本で一番ダンディーな俳優との異名を取る。「舘さんと成田さんなんて、絶対混じり合わないような気がする」とSNSで話題となったこの対談。確かに成田はいつもと違った。

収録日が舘との初対面となった成田は緊張していた。小学生の頃、夕方になるとあぶデカの再放送を見るのが日課だったという成田。テレビに映る舘は30代半ば。都会的なスーツにサングラスといういでたちで、大型バイクにまたがりショットガンをぶっ放す。それまでの刑事ドラマと一線を画すスタイリッシュな映像にぴったりなしぶい男を演じる舘。

今、成田は当時の舘と同世代なのだ。そして目の前には70代半ばにして「基本的なイメージとフォルムみたいなものが、僕が子どもの頃に拝見していた時と基本的に変わっていらっしゃらない」と成田を驚かせる舘がいるのだ。

「いいかげんな俳優でしたよ」 舘のスタイルに成田はタジタジ

「あぶデカを見て育った自分は、おばさんみたいな感じになってしまったのですが…」と成田は、舘の“ダンディズム”維持法を聞き出そうと試みる。しかし、食事制限をするのかと聞くと「それは全くない」と即答の舘。体を鍛えているのかと聞いても「そういうこと、一切やらないです」と言われ肩透かしを食らう。

階段で息が切れ歳を感じるようになったと語る舘に、「逆に(歳を取って)新しく見つけた可能性などはありますか」と問うと「あまりないですね」と言われ撃沈。さらに少し考えた舘に「前よりは台本をちゃんと読むようになりましたね」と追い打ちをかけられ、「読まずにどうやってやるんですか」と質問に困った様子で成田は弱々しく笑った。

成田はスタッフが調べたという舘の“都市伝説”を持ち出した。それは、「(舘は)若い頃、3行以上のセリフは覚えず、サングラスをしてカンペを見るのが目立たないようにしていた」というもの。「怒られるんじゃないかとビクビクしながら話した」と言う成田に舘は「そうですね」と軽快に答え、自身を「いいかげんな俳優でしたよ」と表現する。

あぶデカでも、自分のセリフを一読して収録話の起承転結を頭に入れるだけで、あとは撮影現場で合わせていたそうだ。というのも、あぶデカはアドリブが多かった。「僕はあまりしなかったですけど、(共演の)恭さま、つまり柴田恭兵くんとか、みんなアドリブだらけでした」と話す。80年代のテレビドラマでそういった作り方をする作品は少なく、「結果として良かったんじゃないですかね。面白かったし、視聴率も良かったし」と言う。

「それまでの刑事ものは割と悲壮感がよしとされていたけれど、『あぶない刑事』は悲壮感を否定した。そういう意味では文化的大事業という気がしますね」と舘。それは元からのコンセプトではなく「やっていくうちにそうなって行きましたね。恭さまやトオル(仲村トオル)、オンコ(浅野温子)、みんなと作っていったんです」と、社会現象的なヒットとなったあぶデカのスタイルが出来上がった経緯を語った。

舘ひろしから成田悠輔へお叱り「直そうとは思わないんですか」

適当とも感じられるゆるやかさを醸し出す舘だが、厳しい芸能界で48年間を過ごし、数々の作品に出演し続けてきた。2018年にはモントリオール世界映画祭でワールド・コンペティション部門最優秀男優賞を受賞、2020年には旭日小綬章を受章している。

成田は「(求められ続けるために)ここだけは押さえておくとか、ここだけはしっかりやるみたいなポイントは?」と舘のマイルールたるものを探る。即座に返ってきたのは「遅刻しない」という答えだった。

「セリフは覚えていなくても」とつっこむ成田に、「遅刻はしない」と自信をもって断言する舘。困ったのは成田だ。「遅刻か…」とつぶやき「ほぼ毎回“マイルド遅刻”をしている」と吐露。「それはよくないですね」と舘にマイルドに叱られた。

「人が待っていると考えたことはないのですか?」と舘。「あります」と答える成田にさらに「直そうとは思わないんですか」と穏やかに詰め寄る。言い訳をする子どものように「だいぶ良くなってきた…」としぼりだす成田に「そういうんじゃなくて。思わないんですか? 直したほうがいいですね」と舘。二の句が継げない成田の姿は、本番組では珍しい。

舘の作品歴を見ながら話をしていた時もそうだ。「一番うまくいったなとか、一番しっくりきたなという作品や場面はありますか?」と問う成田に舘は「全くないですね」と答え、「完璧だったなって思ったことはほんとうにないですね。何かありますか? 自分のキャリアの中で完璧だったこと」と成田に逆質問。「もちろん、全くないです」という成田に「そうですよね」と舘。饒(じょう)舌に質問を繰り出すいつもの成田はどこへやら、一枚上手の舘に悶(もん)絶していた。

とはいえ、成田は苦しんでいたわけではないようだ。唐突に「完全に個人的な相談なんですが…」と話し始めた。「これからまだまだある先々を見据えて、ここだけはちゃんとしておいたほうがいいみたいなお叱りをいただくことはできますか」。成田の悩みは「最近、はっきりと言ってくださる方がどんどんいなくなっている」こと。渡りに船の機会だったのだ。

舘は「どんどんいなくなりますよ。しょうがないですよ」共感しつつ、だからこそ自分の“アンテナ”をきちんと張っておいたほうが良いとアドバイスする。さらに「(アンテナを保ち続けるには)人を見ることじゃないですかね。人を見ていると、失敗している人がいっぱいいるじゃないですか。そこから学ぶことですね」と言い、成田は何度もうなずいていた。

本対談は『夜明け前のPLAYERS』公式HPでノーカット版が、公式YouTubeでディレクターズカット版が配信されている。

「夜明け前のPLAYERS」
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