注意欠如・多動症と併発しやすい、その他の神経発達症群とは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】

・反抗的、反社会的行為、攻撃的行為を6カ月以上繰り返す「素行症(CD)」

・否定的、反抗的、不服従の行動を繰り返す「反抗挑発症(ODD)」

注意欠如・多動症と併発しやすい症状

「その他の神経発達症群」は、生まれつきの脳の特性ではあるものの、これまでに説明した6つの診断名に当てはまらないものです。「他の特定される神経発達症」「特定不能の神経発達症」の2種類がありますが、多岐にわたりますので診断名のみ紹介しておきます。

そのかわり、神経発達症群ではありませんが、「注意欠如・多動症(ADHD)」と併発しやすく、発達期によく見られる「素行症(CD)」と「反抗挑発症(ODD)」を紹介します。

素行症は、「他人や動物を攻撃する」「物を破壊する」「嘘をつく・物を盗む」「ルールを破る」という4つの問題行動を繰り返す症状です。10歳未満で発症した場合「小児期発症型」、10歳以上で発症した場合は「青年期発症型」と呼ばれます。注意欠如・多動症の衝動性が強い場合、発症しやすくなるとされ、多くは成長に伴って症状が軽くなり成人までにはおさまります。ただし、小児期発症型の場合、約3分の1は成人後も症状が残ってしまいます。

反抗挑発症は、特に権威のある人に対して「反抗的で挑発的な態度」をとります。素行症と異なるのは、他人を攻撃したり、権利を侵害したりすることがないことです。多くの場合、就学前から中学生までの時期に発症し、対人関係や学業に悪影響を及ぼします。

<ミニコラム> 素行症や反抗挑発症の特性は「反抗期」の子どもにも見られることに留意

素行症や反抗挑発症ですが、子どもが発達していく中で見られることがある行動でもあります。たとえば「反抗期」といわれる時期があります。この時期は、子どもが自立していく際に必要とも考えられているもので、多くの子どもが程度の差こそあれ経験するものです。ただ、スムーズに乗り越えられない子どもが、少数ながらいるようです。こうした診断名にこだわらず、子どもの状態から、行動の理解を進めていくことも必要です。

【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊

監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。

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