今、ベトナムで注目を集める岩政大樹監督。ハノイFCで行なうチーム作りとは?【インタビューパート1】

2024年1月11日、岩政大樹氏がベトナム1部リーグのハノイFCの監督に就任した。2023年12月に鹿島の監督を退任して以降、彼の動向を気にしていた人も多かったのではないか。

ベトナムリーグはいわゆる秋春制。岩政監督は1月からのハーフシーズンを率い、6月14日時点でリーグ戦14試合で8勝2分4敗の3位。カップ戦ではベスト4に進出した。5月は17日から31日の4戦で連勝を記録。未知の土地でも結果を残しているのである。

ベトナムに渡って5か月。現地でどんな経験を積んでいるのか、語ってもらった。

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――まずベトナムで指揮を執ってみての率直な感想は?

「良い経験ができています。ベトナムリーグは中断期間が多く、4試合やって中断、5試合やって中断のような形が続きました。ただ5月は試合が詰まっており、毎週2試合を戦う日程で、8試合ぶっ通し。6月の代表ウィークを挟み、リーグ戦4試合、カップ戦2試合を経てシーズン終了を迎えます。つまり、5月が一番の連戦でした。

5月が勝負という認識は当初からありました。そこに向けて、チームに戦術を浸透させ、上に食らいついていく流れができればなと考えていたので、それが実際にできたという面はすごく良かったです。5月は結果だけでなく内容も示せたので、選手たちと良いチームが作れている実感があります。

サッカーってちょっとしたことで結果が変わる。そのなかで、結果と内容をともに、想定していた勝負どころで表現できたのは監督として大きいです。そのような形に持っていけると、自分のサッカーに整理がつくというか、チーム作りに対する自信も沸いてきます。その面では、監督として初めての経験もできました。5か月間ピッチ内外で様々なことが起きましたが、今はハノイに来る決断をして良かったと思っています」

――シーズン途中に就任し、その後の半年間で、具体的にどのようにチームを作ってきたのですか?

「チーム作りにはいろいろな段階があって、上手くいかないなかで、気付けるところと、気付けないところがある。その意味で、全部勝てれば良いけど、負けることで気付けることもたくさんある。

2、3、4月は、ベトナム人選手にどういう形が合うのか、適応力を確認し、結果は出たり出なかったりの連続でした。そこから、5月にチームを整理してまとめていく流れを作ったつもりで、現場ではすべての試合が勝負ですが、中長期の計画を立てながらやるのも監督の仕事で、短期、中期と、上手く順序立ててやれたかなとは思っています」

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――現地では5月の月間最優秀監督賞も受賞しました。注目すべきは攻撃面で、岩政監督が就任してからの14試合でチームは28得点を奪っています。

「そうですね。5月だけではなく、2月からリーグ戦14試合を戦って、そこに限れば獲得した勝点数で1位になれましたし、何より喜ばしいのは得点力。就任した時には8試合で9得点のチームでしたから。嬉しく思っています。

僕がハノイというチームを見た時、または監督としてどういうチームを作りたいかと考えた時、より攻撃的なチームにしたいとの想いがありました。1試合平均で1ゴールしか取れなかったチームが、僕が来てから1試合平均で2点取れるチームになった。それは目に見える成果です。

内容としてはボールを動かしたり、相手を崩す意識を持ってもらっていますが、当然得点が付いてこないと説得力がなくなるし、自己満足でやっているように映ってしまう。プロは結果ですから、得点力に結びつけるための、攻撃、ビルドアップを自分の中で取り組もうと考え、結果に表われているのはすごく嬉しいし、選手たちと上手くシーズン終盤へ歩んでこれたのは非常に良いことだと思っています」

【第1回終了/全3回】

取材・文●平 龍生(サッカーダイジェスト編集部)

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