「最終予選も3バックで戦うべき!」となるのはナンセンス。シリア戦はテストマッチに近かった【W杯予選/コラム】

2024年6月11日、北中米ワールドカップ・アジア2次予選でシリアを5-0で下した日本の戦いぶりをどう評価すべきか。中村や久保のチャンスメイク、鎌田の相馬へのスルーパスなど素晴らしいプレーはいくつもあった。ミャンマー戦に続き採用した3-4-2-1システムについては、堂安、冨安、南野らが「やりやすかった」と証言しており、そこからは悪くない内容だった点も理解できる。

5-0という結果も申し分ないが、とはいえ安易に「最終予選も3バックで戦うべき!」とはならない。すでに2次予選突破を決めたシチュエーションでのミャンマー戦とシリア戦はテストマッチに近かった。だからこそ、評価が難しいのである。

そもそも評価すべき試合ではないのかもしれない。この日3-4-2-1システムで2シャドーの一角を担った久保が「本当に強い相手とやらないと3バックが正解かは分からない」と言ったように、南野や冨安なども「今日は相手が相手」というニュアンスのコメントをしていた。「試したことに価値がある」という久保の言葉はもっともであり、それ以上でもそれ以下でもない。

3バックのオプションが加わったという程度の感覚がおそらく正しく、3バックと4バックのどちらが最適解かと現時点で考えるのはナンセンスだ。パリ五輪後にはU-23日本代表の選手も改めて競走に加わり、三笘や伊東が復帰する可能性もある。

ワールドカップの最終予選までまだ2か月以上あるのだから、メンバーの入れ替えもあるだろう。シリア戦で活躍したからといって、それが最終予選のメンバー入りを約束するものではない。

最終予選と言えば、過去2大会のワールドカップではいずれも初戦を落としている(しかもホームで)。最終予選が開催される9月はとりわけ、シーズン開幕直後の欧州組にとってコンディション調整が難しい時期になるだろう。システム云々よりも、そのシチュエーションで選手をどうベストの状態に持っていくか、その手段を最優先で考えるべきだ。

いずれにしても、指揮官として前回大会の最終予選を経験している森保監督が過去の失敗を糧にどう修正するか。最終予選の組分け次第なところもあるが、個人的には今、その点にもっとも興味がある。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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