4シーム封印が成功の鍵? レッドソックス投手陣躍進の要因

日本時間6月13日の時点で、先発ローテーションの防御率がMLB5位をマークしているレッドソックス。昨年の先発防御率はMLB21位に過ぎず、ローテーションは開幕前は弱点にも挙げられたが、好調を維持している。その要因として注目されてきたのが、速球の投球割合を大幅に減らしたことだ。『MLB.com』のマーク・ペトリエロがレッドソックスの成功の秘密について、さらに詳しい分析を行っている。

今年のレッドソックスのチームとしての速球の投球割合は、2008年以降で最も低い35%となっている。これは単に投手陣の顔ぶれが変わっただけではなく、戦略の変更によるものだ。2023年シーズン限りで退団した投手と、2024年シーズンから在籍する投手の速球の投球割合を比較すると、やはり後者の方が低い(48%→33%)。また、昨年・今年の両方とも在籍する投手も、同様に速球の投球割合を減らしている(48%→36%)。

レッドソックス投手陣が減らしているのは、速球の中でも特に4シームの割合だ。今年の4シームの割合はMLB最低の16%に過ぎず、2年前の40%と比べて激減している。レッドソックス投手陣が4シームの代わりに投げているのが、シンカー・カッター・スイーパーだという。この変更の典型例が今年サイ・ヤング賞争いに加わる大ブレイク中のタナー・ハウク。ハウクはデビュー当初、最も投げていた4シームをついに封印し、スライダーとシンカー主体の投球に切り替えて成功している。

しかし、レッドソックスは闇雲に投手陣に4シームを投げさせなくなったわけではない。先発右腕ニック・ピベッタや救援右腕ジャスティン・スレイテンのように4シームを武器とする投手も活躍している。ペトリエロ曰く、レッドソックス投手陣が行っているのは「質の良い4シームしか投げないようにする」ということだ。質の良い4シームとは、球速と伸びるような縦変化を十分に備えた4シームのこと。

実際に球速92マイル(約148キロ)かつ重力を除いた縦変化量(IVB)が15インチ(約38センチ)以上ある4シームは、被打率は.237に過ぎず、さらに球種ごとの得点期待値の増減を示す”ランバリュー”は+612(100球あたり+0.3)をマークしている。それに対し、球速はあるが縦変化量を欠くタイプは被打率.271・ランバリューは-414(100球あたり-0.4)。縦変化量はあるが球速を欠くタイプは被打率.285・ランバリューは-219(100球あたり-0.6)、縦変化量も球速も欠くタイプは被打率.298・ランバリューは-227(100球あたり-0.9)と苦戦を強いられている。

今年のレッドソックスは、縦変化量(IVB)が11インチ(約27.9センチ)の4シームをわずか3球しか投げていない(昨年は868球)。そして球速92マイル・縦変化量(IVB)15インチ以下の4シームは、今年わずか5球しか投じられていない(昨年は267球)。この大胆な施策は機能しており、レッドソックス投手陣の4シームは被打率.199・OPS.610に数字を改善させ、MLB18位から6位への飛躍を遂げた。

質の悪い4シームを淘汰するという戦略には、敏腕と名高いアンドリュー・ベイリー投手コーチが就任した影響があると言われている。ベイリー投手コーチとレッドソックスの投手陣は、これまでの「4シームが投球の基本」というセオリーを覆してしまうかもしれない。

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