最大会派・自民党県議団会長 知事と二人三脚で海外視察の意義をアピール 県民が知りたい詳細な費用と報告書は公開されず

費用が多額で運用が不透明だという指摘が出ている福岡県議会の海外視察をめぐる問題です。

参加した議員は「費用」ではなく「成果」を見るように訴えていますが、費用の詳細などは明らかにされず、ルールを見直すための会合も突然非公開になるなど疑念は膨らむばかりです。

「費用を上回る効果、自負がある」と胸をはった県議

6月12日の福岡県議会。自民党県議団の会長は自ら代表質問に立ち、多額の公費を費やしてきた県議会の海外視察について胸をはりました。

自民党県議団 松尾統章 会長
「費用を上回る効果をもたらしてきたという自負があります」

「自負がある」と正当化した上で服部県知事に目的とその効果を質問。

知事が議員の海外視察の意義や効果を議場で説明するというやりとりが繰り広げられました。(詳細は後半に記載)

その中で知事が成果の一つとして挙げたのが、「宗像・沖ノ島と関連遺産群」の世界遺産への登録です。

ポーランドで開催されたユネスコの委員会をRKBも取材していましたが、国際会議という特殊な場で県議の活動が大きく影響したようには見えませんでした。

このほかにもラグビーワールドカップや九州国立博物館で開催された「台北故宮博物院」の福岡への誘致などが海外視察の成果として挙げられました。

この視察の報告書について議会事務局は「保存期間が過ぎていてあるかどうか分からない」と説明。

「湯水のごとくお金を使い視察する意味あるの?」と話す県議も

県議会の関係者は「成果と議員視察は関係ないのではないか」としていて、「湯水のごとくお金を使ってわざわざ視察をする意味があるのか」と話す県議会議員もいます。

海外視察の費用は当初予算の3倍に

昨年度、海外視察に費やした公費と派遣された議員の数が全国最多となった福岡県議会。

使われた公費は5年間で当初予算の3倍以上にのぼるおよそ2億8500万円でした。

報告書なし 費用の詳細も公開されず

視察の内容がわかる報告書や費用の詳細は公開されておらず、費用の上限や報告書の作成義務もありませんでした。

座長は「予算より成果みて」

こうした点が問題視され、海外視察のルールを見直すためにプロジェクトチームが設置され、初会合を開きましたが…

プロジェクトチームの座長 自民党県議団・野原隆士 県議
「(視察費が)高いというのは何をもって高いかよくわからない。「予算というよりも(視察の)成果を見ていただきたい」

ここでも強調されたのは「費用よりも成果」。

知事も職員が書いているから?

随行した県の職員が報告書を書いていることについては…

プロジェクトチームの座長 自民党県議団・野原隆士 県議
「じゃあ知事はそれで(視察に)行かれた時に知事個人が(報告書を)作るかという話もあるんだろうと思うんですよね」

情報公開請求しても詳細は非開示だった

「どのような視察を行い、どういったことに公費がかけられたのか」。

RKBは、2019年度から実施された海外視察の報告書や費用の詳細がわかる資料などを情報公開請求しました。本来の期限から1か月延期されて、先週ようやく資料が開示されましたが…

RKB 野島裕輝 記者
「情報公開請求をして今回出てきたのがこちらの資料です。視察費の総額がわかる資料は出てきましたが、詳細がわかるものは開示されませんでした」

見直し検討するプロジェクトチームの会合が非公開に

不透明な状況に疑念が深まるなか、プロジェクトチームの2回目の会合は突如、非公開に。

設置要領では「できる限り公開するもの」とされていますが、非公開にした理由は「報道陣がいると自由な議論ができない」というものでした。

議会事務局「内容言わないように指示されている」

終了後も協議内容についてほぼ取材に応じず、議会事務局は「内容は言わないように指示されている」として回答しませんでした。

識者は「情報公開する責任がある」

海外視察などの問題についてチェックしてきた市民団体は、公費で視察する以上は徹底した情報公開が必要だと指摘します。

市民オンブズマン福岡 児嶋研二 代表幹事
「どのような視察をしたのか、どこに行ってどういう成果があったのか、ここをきちんと県民に対して説明する、情報公開する責任があると思います」

海外視察をめぐる後ろ向きな対応に県民の理解は得られるのか?

プロジェクトチームは6月24日までに海外視察の改革案をまとめる予定です。

【県議会知事と自民党県議団・会長のやりとり詳細】

自民党県議団 松尾統章 会長
知事にお尋ねします。服部理事は世界から選ばれる福岡県を標榜され、知事就任以来、精力的に海外活動を行ってきたと思います。知事が議会に同行を求める場合、どういった目的で要請され、その効果についてどのように考えているか?

福岡県 服部知事
海外視察等について県議会単独で実施する海外活動以外で知事から議会に要請する海外活動の目的とその効果についてお尋ねがありましたこれは3つあると考える。まず1つ目は県として訪問団を作って派遣する際、地方自治における2元代表制の両輪である知事と議会がともに現地を訪れ、双方が一体となって取り組む姿勢を相手方に示すことで、我々の熱意や取り組みへの実効性といったものを相手方に理解いただくことにつながります。

例を挙げますと、県議会がワンヘルス教育に先進的に取り組むハワイ大学との協力関係を築かれ、このことが昨年4月、私とハワイ大学学長との間でワンヘルス教育研究に関する覚書の締結につながった。さらにこのことは先月ハワイ州のグリーン知事と私、香原県議会議長、3者連名でのワンヘルスの推進に関する共同宣言の発出につながりました。

このような海外活動に同行いただく県内の企業、経済団体、あるいは大学のみなさんなどにに対しても議会がともに活動している姿を見ていただくことは同様の効果があるものと考えている

2つ目は質問で述べられていましたが、世界遺産の登録を目指しての各国大使等へのロビー活動や観光誘客のためのプロモーションなど現地の方をお招きするイベントなどにおきましては知事と知事同様に県民の負託を受けた県議会のみなさんが、ともにホスト役として対応することによりまして、本県の意図や熱意を強く伝えることとなり、効果的なアピールにつながるものでございます。

3つめは県議会のみなさんが訪問先で知事とともに話を聞いてレクチャーを受けていただきあるいは現地の状況を実際にみていただくことによりまして、県の課題や施策の方向性について共通認識をもっていただくとともに、海外戦略の必要性や重要性を理解いただき円滑に施策を実行できる効果があるものと考えております

例をあげますと昨年8月オーストラリアニューサウスウェールズ州に県議会のみなさまと訪れた際、州政府からの説明を受けるとともに、世界最大の石炭積出港でありますニューカッスル港において石炭からグリーン水素への転換の計画やその状況において、ニューサウスウェールズ州の水素エネルギーの状況について優位性などについて調査を行ったことで、県議会のみなさまに連携の必要性をご理解いただき、11月には私とニューサウスウェールズ州首相との水素分野における協力促進に関する覚書を締結できたところであります

引き続き県議会のみなさまと連携をはかりながら、県の産業振興をはじめ様々な政策の実現のため海外活動に取り組んでまいります。

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