崖っぷちに立たされたマブズ。ドンチッチは第4戦に向けて原点回帰「楽しんでプレーすることに立ち戻る」<DUNKSHOOT>

ホームのアメリカンエアラインズ・センターで迎えた6月12日(日本時間13日)のNBAファイナル第3戦。2011年以来の頂点を目指すダラス・マーベリックスは、会場にレジェンドOBのダーク・ノビツキーやスティーブ・ナッシュらが駆けつけ、総勢2万311人ものファンが見守った。

序盤にチームに勢いをつけたカイリー・アービングが、シリーズベストかつゲームハイの35得点に3リバウンド、2アシストをマーク。さらにルカ・ドンチッチが27得点、6リバウンド、6アシスト、PJ・ワシントンが13得点、8リバウンド、デレック・ライブリー二世が11得点、13リバウンドと躍動した。

しかしセルティックスから勝利を奪うことはできずに99-106で敗戦。第1クォーターで手にした13点リードは瞬く間に消え、第4クォーター序盤には21点ビハインドを背負う窮地に追い込まれた。

そこからホームの大歓声もあって息を吹き返し、残り3分37秒にはアービングのジャンパーで1点差、残り1分20秒にもライブリー二世のダンクで2点差まで肉薄したものの、歓声は溜め息に変わった。
試合後、「僕らには(勝利を掴む)チャンスがあった。勝利に近づいていたんだ。それをモノにできなかっただけ。せめて僕がコートに出ていられたら…」とドンチッチが話した通り、マブズは試合時間残り4分12秒に大エースが痛恨のファウルアウト。これがなければ結果は違うものになっていたかもしれない。

激闘から一夜明けた13日、マブズは会場でフィルムセッションをこなし、アービングが相棒について言及した。

「僕が彼(ドンチッチ)に送ったメッセージは『君は1人じゃない』ってこと。彼はケガとかいろいろな要素があるなか、ベストを尽くしてプレーしていた。持ちうるすべてをチームに持ち込んでくれている。だから彼のせいなんかじゃない」

とはいえ、プレーオフの4戦先勝シリーズで3勝0敗になった過去156例のうち、逆転が起こった例は皆無。ファイナルの舞台でも3勝をしている側がすべて優勝しているため、データ上では0勝3敗のマブズがセルティックス相手に4連勝することは不可能に近いと言っていい。 それでも、ドンチッチはまるで吹っ切れたかのように、第3戦の手応えを口にしている。

「今は楽しんでプレーすることに立ち戻っている。僕らが話したのは、どのようにしてファイナルの第4クォーターに21点差から巻き返したかというものだった。その時、僕らは楽しんでいたし、しっかり守って、走っていた。自分たちのペースも最高だったし、いいショットを打てていた」

ファイナル3試合を終えた時点で、ドンチッチは両チームトップの平均29.7点、9.0リバウンド、6.0アシスト、2.33スティールに加え、フィールドゴール成功率47.3%と上々の数字。ダブルチームを送らず、ペイントエリアでのフェイクにほとんど引っかからないセルティックスのディフェンスの前にアシストが伸びず、ケガの影響かフリースローは成功率58.8%と不調ながら、チームのために奮戦していることは間違いない。
そんなドンチッチが望むのは勝利のみ。「僕はとにかく勝ちたい。正しい方法でそれを見せることができていない時もあるけど、最終的に僕は本当に勝ちたいんだ。もっと違うやり方で、いい仕事をしていかなきゃいけない」と意気込む。

14日(日本時間15日)のシリーズ第4戦で、今季の覇権争い最終章は終わりを迎えてしまうのか。マブズが初戦の大敗から浮上してきたことは確かなだけに、なんとかホームで一矢報いたいところだ。

文●秋山裕之(フリーライター)

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