ソフトバンク廣瀨隆太があえて見送ったストライクの意味 王貞治会長に「新旧交代」を期待させたプロ初本塁打に見た余裕

5回2死一塁、笹川の二盗の時、ストライクを見送った広瀬(撮影・穴井友梨)

◆日本生命セ・パ交流戦 ソフトバンク2―0阪神(14日、みずほペイペイドーム)

自分の一発でチームが勝った。しかも得点はその一発による2点だけだ。もちろん、投手陣の奮投あっての結果だが、プロ1号が決勝弾。お立ち台に上がった廣瀨の顔には幸せいっぱいの笑みが広がっていた。当然だ。

一方、こちらは期待を寄せる大砲候補の一発とあって、手をたたきながら試合後のベンチ裏へと出てきたのは王球団会長だ。「新旧交代。ウチは(他球団と比べると)ちょっと遅かったけど、そういう年代になってきているからね」。主砲柳田の負傷離脱も重なるとあって、王会長の期待が膨らむのも無理はない。

試合前まで、廣瀨の打率は1割7分1厘だった。それでも6試合連続でスタメン起用された。だからこそ、一発が出た後の首脳陣の喜びようにも普段以上の熱が感じられた。誰もが待ち望んだ一発だったということだ。

ただ、個人的に驚かされたのは本塁打を打つ直前にあった。1ストライクからの2球目。プロ初安打で出塁した笹川がプロ初盗塁を成功させた場面で、廣瀨は甘めの変化球を見送った。「完璧なスタートだったので」。囲み取材が解けた後に広瀬本人に確認すると、そう明かしてくれた。

自身が2ストライクと追い込まれるのに、1学年下の笹川の二盗を優先させた上での一発だった。打席で余裕が出てきた証しだろうか。本当に素晴らしい一発だった。(石田泰隆)

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