【全文掲載】小橋建太と井浦新がトークバトルでコスチュームデザイン激論!「新さんがオレンジへの未練を断ち切ってくれた」「小橋さんの炎は一番熱い紫の炎」

12日、東京都・後楽園ホールにて小橋建太プロデュース興行『Fortune Dream 9』が開催。小橋建太と井浦新さんがトークバトルを展開した。

年に1度行われてきた『Fortune Dream』では小橋が大物選手たちとのトークバトルを実施することが定番となっており、これまでには長州力、天龍源一郎、佐々木健介、豊田真奈美、蝶野正洋、前田日明、川田利明&田上明、スタン・ハンセンと激闘を繰り広げてきた。

小橋の歴史を彩ってきたプロレスラーたちとのトークバトルが定番となっていたが、今回の相手は俳優の井浦新さん。
井浦さんは1999年の映画『ワンダフルライフ』で初主演して以降は映画・ドラマを問わず引っ張りだこの超売れっ子俳優に。自身のファッションブランドも手掛けており、マルチな活躍を見せている。

そんな井浦さんは小橋の大ファンであり、NOAH旗揚げ時から意外な形で小橋に関わり続けてきたという。
リングの上で輝くプロレスラーと、プロレスラーをリング上で輝かせるために尽力してきた存在がそれぞれの視点からプロレスを語った。

井浦さんも小橋の入場曲&ガウンをまとって入場。コール時には握りこぶしを突き上げる。両者握手ののちに記念撮影を行い、トークバトル開戦のゴング。

――新さん、憧れのプロレスのリングにガウンを着て入場した感想は
井浦「ヤバいっすよね。ヤバいです。普段は皆さんと同じところにいるんですけど、今日だけはファン代表で許してください(笑)」
小橋「いやあ、僕がオレンジから黒に変えたとき、新さんに相談したんです。オレンジを13年間使っていて、色を変えたいと。そのときに新さんが『僕に任せて欲しい』と作ってくれたんです」

――小橋さんのガウンやコスチューム、Fortune Dreamのロゴも新さんがデザインしているとのことですが、そもそもお2人の出会いのキッカケは
井浦「一番最初は2000年のNOAH立ち上げの際に御縁を頂いて。皆さん覚えてますか?NOAH立ち上げのときに選手の皆さんが来ていた赤いTシャツにジャージ、ノースリーブの黒いジャージのセットアップ。あれを皆さん選手1人1人に採寸させていただいて、ジャージ作らせてもらったんです。最初に小橋さんのサイズを測って、小橋さん専用のジャージを作ったんです。そこからの縁なんですけど、いきなり小橋さんとの関係がグっと縮まったのは、小橋さんが声をかけてくれたからでした」
小橋「声をかけたっていうか、デザインを見て『この人だったら』と。オレンジを13年間使っていたんで、オレンジ色っていうのはすごい大事にしてる色だったんですよ。これを変えようと思ったときに、今を乗り越えるには色を変えないといけないと思ったときに、新さんに相談したんです。『僕の新しいタイツを作ってくれないですか』と。新さん覚えてます?」
井浦「もちろんですよ!」
小橋「言ったときはNOAHの事務所で」
井浦「あの日、僕はNOAHのディファ有明での大会の試合を見てて、座って見てたら西永レフェリーが“ちょんちょん”って。スゴいびっくりしてたら『ちょっといいですか?小橋さんがお話があるそうで』って。ちょっと嬉しい気持ちと……気持ち悪くなってきて(笑)小橋さんとはそのときちゃんとお話したことなかったんで、『なんで小橋さんが自分にお話があるんだろう?なんかしちゃったのかな』って。それで小橋さんがいらっしゃるところまで行ったら、さっき小橋さんが言ったように、『コスチュームを変えたい』っていうお話が始まりました。もう、記憶が飛んでました。試合で何を見たのとか覚えてないです(笑)」

――小橋さんがオレンジを黒に変えるというのは、デザインを任されるほうにも重圧があった?
井浦「重圧は本当にありました。僕も小橋選手の1ファンとして、ファンの皆さんの気持も分かりますから。オレンジ色をなによりもずっと大事にしてるのは小橋さんなんで、小橋さんがオレンジを変えるっていうのは、ちょっと事件ですよね。ホントどうしようかなと」
小橋「最初、(デザインが)黒にグレーの炎だったんですね。それで、明るい色が入ってなかったので、『オレンジは入らないんですか?』って言ったんです。オレンジがどっかに欲しかったんです。まだ、そういうオレンジへの思いが、未練が……。『オレンジは入らないですか?』って言ったら、『入りません』と。やっぱりね、顔は甘いマスクなんですけど、意見は結構ズバッと言ってきます(笑)その話をしたときに、『あぁ、オレンジと決別しないとダメなんだな』と」

――オレンジへの未練を断ち切ったのが新さんだったと
小橋「そうそう。『入りません』っていう新さんの言葉で」

――オレンジへの未練をよく断ち切れたと思う
井浦「流れっていうのがあって、小橋さんが一気に気持ちも何もかも変わって展開したいって気持ちがすごく伝わってきたんですよね。オレンジを過去のものにして、これからNOAHが始まっていって、小橋さんが引っ張っていくNOAHをイメージして。もう新しい色をスタートさせて、こっから始まっていくのが絶対いいんじゃないかって。あと、1ファンとして小橋さんが黒いコスチュームで、日焼けをした身体でリングに立ったら……もう怖すぎて……。それから本当に絶対王者になってしまうので、とにかく怖い小橋さん。そういうレスラー像が僕の中に浮かんでて。優しさはリングの上では感じないような、強さ、怖さみたいなものが」
小橋「まさに、そのおかげですよね。自分が変わることが出来たっていうのは、そのおかげです」

――オレンジのタイツには若手のイメージもあった。その頃年齢的にもオレンジは……
小橋「年齢のこと言うんじゃない!50になっても60になってもいいんだよ(笑)オレンジは今も好きだよ?(笑)そして、グレーの炎っていうのが、ちょっと尖った炎だったんですね。絶対王者のときは炎が尖ってるんです。よく見てほしいんですけど、2000年にタイツを変えてデザインしてもらったときにグレーの炎だったんですね。ヒザの手術をして、復帰をするときに、新さんに『グレーのところに色を入れて欲しい』とリクエストしたんです。そしたら新さんがね……カッコいいんですよ(笑)『僕が一番大事にしてる色を使います』と。男前なんですよぉ~。それで、紫を入れてくれたんです」

――紫にはどういうこだわりがあったのか
井浦「好きな色でもあるし、紫っていうのは高貴な特別な色ですし、当時やっていた洋服のブランドでも紫っていうのはイメージカラーにしていて。すごく大事に大事に使っていた紫を小橋さんに捧げたいなと思って」
小橋「嬉しいじゃないですか。『自分が大事にしてる色を使ってください』っていう気持ち。これでこだわりが強いからやっぱりここまで来てるんです」

――紫の炎というのは小橋さんにマッチしていたと思う
井浦「そうなんです。炎の話も小橋さんと結構してて。なぜ炎なのか、なぜ紫なのかとか。炎って赤とかオレンジで絵に描くじゃないですか。一番熱いところって青紫で。一番炎の温度が熱いのが紫色なんです。小橋さんのオレンジの青春、炎、情熱っていうものが、そこからアップデートされていくと紫になって、一番熱くて情熱もさらに研ぎ澄まされた紫の炎にしていきたいという話をして」

――小橋さんが入場時に着てきたガウンが三沢さんと闘ったときのもの、井浦さんが着てきたガウンは小橋さんが引退時に着てきたガウン。三沢さんとの試合のときの映像が今日は用意されているということで……
(※2003年3月1日の日本武道館大会 小橋建太vs三沢光晴戦のダイジェスト映像が流れる)

――このコスチュームの紫の炎は……
井浦「……あっ、ちょっと(映像を)見たいですね」

――小橋さん、このガウンを着て入場したときの気持ちは
小橋「新さんがデザインしてくれたガウンっていうのは、最初薄い生地だったんです。薄い生地で」
井浦「そうなんです。ナイロンでスポーティに作ってみたんです、最初は」
小橋「それがこんな分厚い。これはね、裸の上に着るもんですよ(笑)スーツの上に着るもんじゃない。暑かったです(笑)」
井浦「久々に見ると結構毛羽立ってるんですけど、作りたてのときって分厚いベルベット素材だったんです。でも、洗っていって……(※映像の中で小橋が場外で頭からぶっ刺される)ああっ!!……僕はこの試合見てて、作らせてもらったガウンやコスチュームを小橋さんが着てるってよりも、なんか今まで『今回はどんな試合を見せてくれるんだろう』って無責任に一方的に無責任にワクワクしていたんですけど、コスチュームで小橋さんと関わらせてもらってから、どこかで試合を楽しめなくて。『怪我しないでください』って気持ちが勝っちゃうっていうか。この試合で、三沢さんも小橋さんも塗り替えてしまったじゃないですか、プロレスを。(※映像の中で小橋が三沢さんをひどい角度でぶっ刺す)うわぁっ!!」
小橋「これね、三沢さんのヒザが顔面に入って、顔面骨折。三沢さんもアゴを何針か縫って……まあ、そういうこともあるよ(笑)」
(※映像がちょうど小橋さんがバーニングハンマーを決めて試合が終わり、観衆は大喝采)

――ファイナルバーニング(引退時)のガウンにはどういう思い入れがあるか
井浦「小橋さんに何バージョンもガウンを作っていて、その度にブラッシュアップしてるんですよ。例えば、これはリングに上がるまで顔を見せたくなくて。(フードを)被るとストンって落ちるんですけど、小橋さん実際これ歩きづらかったんですよね(笑)これをどうにかしていきたいなと思って。最終形態が、ここにワイヤーを入れて自分で角度を作れたりとか」
小橋「だから、これが1つのポーズになったんだよね」

――小橋太っ太さんが真似するやつ
小橋「太っ太が真似すんの?あの野郎!(笑)」
井浦「当時は装飾メインだったんで、とにかく光が当たったときにキラっとするようにとかの工夫をしていたんですけど、最終的には汗の問題とか、暑さとか、身体にまとわりつかないように裏地はメッシュにしていって、それでも表はベルベットだったりとか。洋服的にはファッション的な要素だけじゃなくて機能的なものも、見た目と機能をとことん重視して」
小橋「このトーク、僕も聞いてなかったんですよ、そういうことは」

――小橋さんも汗の問題は気になっていた?
小橋「気になりました(笑)」
井浦「気持ちよく入場出来ないのって良くないじゃないですか。そこをサポートさせていただいているんで、『見た目だけじゃダメなんだな』って、僕自身も勉強になりました」
小橋「カッコいいねえ!(笑)」

――小橋さんの中でお気に入りのコスチュームは
小橋「やっぱりね、一番最初に黒に変えたときに、軽いナイロン素材の。あれはディファ有明で変えたんですけど、入場時に皆に姿を見せたときに、『オォーッ!!』って皆が反応してくれたんで思い出深いですね」

――井浦さんの小橋建太愛をお聞きしたく。好きな技を挙げていただくと映像が流れるかも知れない
井浦「ホントですか?好きな技はいっぱいあるんですよね~」
小橋「昔、ドラマで握りこぶしを作って、ラジアントかなんかで」
井浦「(ドラマに出たときに)小橋選手とKENTA選手へのオマージュでgo 2 sleepと小橋さんのラリアットをどうしてもやりたいって言ってやらせてもらいました」
小橋「前に、僕がドラマに出たんです。僕がドラマに出たときに、新たさんに連絡して、今度ドラマ出るんですよって。何時にどこどこつって。言ったら見てくれて。『いやあ、上手いですよ』って。上手いわけないんですよ(笑)気分は一流俳優ですよ(笑)」

――小橋さんの演技は実際どうだった?
井浦「……とても、ナチュラルでした(笑)」
小橋「…………(笑)」

(※井浦さんが好きな技としてオレンジクラッシュを挙げるも映像の用意は無し)

井浦「オレンジクラッシュは良い技だと思うんですよ。ブレーンバスターから前に落とす。僕が好きな技の系統っていうのは、垂直落下系が好きみたいで。自分でも頭の中でイメージするときは、持ち上げてから垂直に落としてる。その中でもオレンジクラッシュは早かったと思うんです。高く上げてから頭から落としていくのは、『こんな夢みたいな技があるんだな』って思った記憶があります。垂直落下といえば、垂直落下式ブレーンバスターですよね」

(※小橋が本当に垂直に落下させる垂直落下式ブレーンバスターの映像が流れる)

井浦「どんな選手にも出せる技じゃないですよね。受けられる選手もある程度限られるというか、本当に首、イってしまいますね」
小橋「これはイってしまいますね。でも、関係なしにやってましたね」
井浦「昭和のプロレスはブレーンバスターが必殺技になってる時代もありましたけど、近代のプロレスでブレーンバスターを必殺技に出来るのって原点回帰でもありながら、 『やっぱりブレーンバスターってスゴい技なんだな』って。しかも小橋さんの体重が全部乗っての垂直落下じゃないですか」
小橋「これ、ブレーンバスターで持ち上げて止めるっていうのが快感になってたんですね。デカい外人選手はね、持ち上げると嫌がるんですよ。ハンセンとか特に嫌がるんですよ(笑)ぐ~っと持ち上げて止めると嫌がってるのが分かるんでね(笑)でも重いんでバランスが崩れると持てないんで。でも、エプロンからハンセン持ち上げたんです。止めてると、持ち上げた瞬間にハムストリングスからブチッて音がして。でも持ち上げました。ハンセンが嫌がるんで(笑)」

――他にもVTRがあるんですが、他に思い浮かぶ技は
井浦「小橋さんと言えば垂直落下もあるんですけど、僕がずっと好きなのはローリング・クレイドルですね」
小橋「ローリング・クレイドルって言ってくれるの嬉しいですね」

(※小橋のローリング・クレイドルの映像が流れる)

井浦「下手すると自分でもできるって思わせてくれる(笑)ちょっと友達とやってみようかなって思わせてくれるんですけど、実際は難しかったです(笑)」
小橋「ローリング・クレイドルはね、昔テリー・ファンクがやってたんで。テリー・ファンクとのローリング・クレイドルの掛け合いを。僕がグルーっと回るとテリー・ファンクも『クソッ!』って感じでやって来て、ローリング・クレイドルの掛け合いをやったのは今でも覚えてますね。すごく思い出のある技です」

――ローリング・クレイドルにはどんな効果がある?
小橋「効果的に言えば……目が回る!(笑)それで、ローリング・クレイドルっていうのは実はかけながら足を極めることもできる。そういう固め方をすればホントはもっと効果的にいい技になるんです。足を極めることも出来ますし、すごくホントは良い技なんです」
井浦「美しい技ですよね。小橋さんの試合で『まだ回すんだ?!』ってときもありますし、小橋さんが乗っかっちゃってもまだ回す。見栄えも良くて素晴らしい技だと思います」
小橋「回数が少ないと、どこに効いてるか分からないんですよね(笑)10回以上回ると、かけたほうも立てなくなるんですよ(笑)」

(※最後にバーニングハンマー、リストクラッチ式バーニングハンマーの映像が流れる)

井浦「大好きです!もう!マジで理想的なプロレスの技だと思います!」

――田上さんはこういう初めての技(リストクラッチ式)をやられがち……
井浦「やられがちですよね(笑)リストクラッチは田上さんが初めてですよね?」
小橋「リストクラッチは2回やってるんだよね。田上さんとKENTAにやってるんで。やっぱ、バーニングハンマーは危ないですね。落とし方がどうしてもガッと頭のてっぺんから行くんで」

――バーニングハンマーの誕生秘話は
小橋「タイガー・ドライバー‘91とかを見てて、三沢さんを倒すにはそれ以上の技を作るしかないと。でも、『この試合で超えるんだ!』っていう思いがなかったら、進歩っていうのは無いと思うんですよね(ここで30分経過のゴング)」

――三沢さんを超えるために作られたのがバーニングハンマーだったんですね
小橋「そうですね」

トークバトルは今年も30分フルタイムドロー。
バトル後には笑顔で記念撮影を行い、互いにロープを上げてリスペクトし合いながらリング下へ。小橋ファン&井浦ファンの大歓声を背に受けながら退場していった。

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