ロボテス+エフレイ 来年4月統合へ、知事と理事長合意

統合に関する基本合意書を交わす内堀知事(右)と山崎理事長

 県は14日、ロボットなどの実証拠点「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)を2025年4月1日に福島国際研究教育機構(エフレイ)へ統合する方針を明らかにした。エフレイはロボットを重点分野に位置付けており、同フィールドを活用し、廃炉や災害現場などの過酷環境下で作業できるロボットなどを開発する。エフレイが所有する研究施設の第1号となり、世界水準を見据えた技術開発の拠点を目指す。

 内堀雅雄知事と山崎光悦理事長らが南相馬市の同フィールド本施設で締結式に臨み、統合に関する基本合意書を交わした。

 山崎理事長は「日本のドローン技術は世界と比べて若干遅れている。ロボットやドローンの研究者らと共に、この場所で世界トップレベルの技術開発を目指す」と強調。内堀知事は「エフレイが世界水準の研究開発を進め、施設に集う企業・研究機関との相乗効果を発揮し、成果を最大化できるよう県として緊密に連携する」と語った。

 エフレイは統合後の方向性に「災害対応ロボットの研究開発」を挙げた。過酷環境への対応力や機動性などの性能評価手法を確立し、国際標準化も視野に入れる。25年には同フィールドでインフラ・災害対応分野ロボットの国際大会「ワールドロボットサミット」を開催する予定だ。

 23年4月に設立したエフレイはまだ自前の研究施設を持たず、最重要使命の研究開発をほぼ全て外部委託で進めてきた。統合後は委託研究の実証試験などに同フィールドが活用されるほか、自前で雇用する国内外の著名研究者らにとっても主要研究拠点の一つになる。同フィールドは20年3月に全面開所。ドローンを自由に飛ばせる国内最大規模のネット付き飛行場などを備え、実証事業などの活用事例は今年3月までに980件に上る。

 統合は22年3月決定のエフレイに関する政府基本構想に盛り込まれ、内堀知事が23年12月、本格検討の開始を表明。統合の具体的枠組みや協力体制などを詰めていた。締結式には復興庁の角田隆事務次官や福島イノベーション・コースト構想推進機構の斎藤保理事長らが出席した。

 補完関係強固に

 福島ロボットテストフィールドが2025年4月、福島国際研究教育機構(エフレイ)に統合されることが決まった。同フィールドは陸海空を問わずロボットの実証試験を担う一大拠点で、研究開発に軸足を置くエフレイとは相互に不足する機能を補完する関係にある。地元関係者は、拠点周辺に企業や研究機関が集積し、本県の産業基盤構築を目指す福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を加速させる将来像を描く。

 同フィールドは約50ヘクタールの敷地に▽無人航空機▽インフラ点検・災害対応▽水中・水上ロボット―などの各エリアを設置。多様なロボットの性能評価や操縦訓練などができる「世界に類を見ない施設」として注目を集め、開所以来10万人以上の研究者らが訪れた。東日本大震災後に浜通りに新規進出したロボット関連企業は78社に上り、数々の挑戦を後押しする場になっている。

 こうした成果や機能をエフレイに継承しつつ、県も「緊密な連携」(内堀雅雄知事)を念頭に関与を継続する考えだ。14日締結した基本合意書には統合と同じ25年4月に「県・エフレイ調整会議」を設置し、イノベ構想の推進や産業振興などに関する協議の場を年2回開催することを明記。同フィールドの建物や設備などの財産は県が現物出資し、大規模修繕などに備えて積み立ててきた基金約3億円(22年度末時点)もエフレイに引き渡す。

 山崎光悦理事長は「県は国と並ぶエフレイの出資者となり、これまで以上に両者の強固な関係が築かれる」と述べ、県との関係性が深まることへの期待を示した。

 同フィールドの管理運営は当面、福島イノベーション・コースト構想推進機構が継続して担う。斎藤保理事長は「機構が培ってきた企業や産業支援団体、教育機関などとのネットワークを最大限に活用し、イノベ構想を一層加速させたい」と意気込んだ。

 また本県は長崎県と共に、市街地でのドローン飛行の規制が緩和される国家戦略特区への指定が決まっており、同フィールドはドローン配送の産業化に向けた実証拠点としても活用される見通し。

 内堀知事は「特区制度を使って他の地域ではできない試験・開発を行い、商用化につなげていく」と述べ、統合が好影響をもたらすとの見方を示した。

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