ラマポーザ大統領が続投、連立政権樹立で合意 南アフリカ

南アフリカで5月29日に行われた総選挙で、30年前のアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃以来初めて過半数議席を失った与党「アフリカ民族会議(ANC)」が、野党との連立で合意した。それに伴い、14日の議会投票で、ANCを率いる現職のシリル・ラマポーザ大統領の再任が決まった。

ANCは、第2党となった中道右派「民主同盟(DA)」や複数の小規模政党と連立を組む。

ラマポーザ大統領は勝利演説で、新しい連立政権の誕生を称え、有権者は各指導者が「我が国のすべての人々のために行動し、連携する」ことを期待していると述べた。

先月末の総選挙で、ANCは30年ぶりに議会の過半数を失った。得票率はANCが40%、続いてDAが22%だった。この数週間、ANCがどこと連立を組むのか憶測を呼んでいた。

ANCのフィキレ・ムバルラ幹事長は、連立合意は「注目すべき一歩」だと述べた。

連立政権の樹立によって、2018年の激しい権力闘争の末にジェイコブ・ズマ氏に代わり大統領とANCトップに就任したラマポーザ氏は、権力を維持できることとなった。

ラマポーザ氏は今後、DAのメンバーを含め、閣僚ポストの割り当てを決定する。

複数政党の連立合意には、ANCを離党したメンバーが立ち上げた2政党は参加していない。有権者が求める経済改革を連立政権が実現できなかった場合は、こうした政党への支持が増える見通し。ただ、多くの国民は今回の前例のない大連立が成功することを望んでいると、世論調査は示している。

南アフリカでは、1994年に同国初の民主選挙を経てネルソン・マンデラ氏が大統領に就任して以来、ANCが常に50%超の支持率を維持していた。

しかし、高水準の汚職や失業、犯罪への怒りから、同党への支持は著しく低下している。

ラマポーザ大統領は続投決定を受けて議会で演説し、ANCが30年前の大統領選で初勝利した時のことを振り返った。

「我々は前にも、こういう状況を前にしていた。1994年にもここで、国を団結させ、和解を実現しようとしていた。そして今もまた同じだ」

前例のない連立

数十年にわたりライバル関係にある、中道右派のDAとANCの連立は前例がない。

マンデラ元大統領のもと、ANCは人種差別的な政策、アパルトヘイトに反対する運動を主導し、南アフリカ初の民主的な選挙で勝利を収めた。

DAに批判的な人々は、DAがアパルトヘイト時代に築き上げた、少数派の白人による経済的特権を守ろうとしていると非難している。DA側はこれを否定している。

DAのジョン・スティーンハイセン党首は、14日遅くにケープタウンで議員を前に演説し、「今日は我が国にとって歴史的な日だ。新たな章の始まりだと、私は思う」と述べた。

国民議会(下院)はANCから議長を任命し、DAは副議長ポストを得た。

連立合意後に演説した党首の中には、2013年にANCを離党して「経済的解放の闘士」(EFF)を立ち上げたジュリアス・マレマ党首も含まれる。

マレマ氏はEFFは「南アフリカ国民の結果と声」を受け入れるとしつつ、「我々は、南アフリカの経済と生産手段に対する白人の独占力を強化するための、この政略的な連立には同意しない」と述べた。

(英語記事 Cyril Ramaphosa re-elected South African president

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社