悪気はないけれど「元カノ」と比べてしまう…。過去の女性を思い出す男性の本音とは

好きな人が現在いて、片思い中でも恋人でも、ふたりの時間を楽しく過ごせるのが理想なのは男性もが同じ。

それなのに、過去に付き合っていた女性のことが不意に思い出されて、今の好きな人と比べてしまうことがあります。

その結果、元カノへの未練に気がついたり改めて今の好きな人への好意を実感したり、比較することが自分の気持ちを知るきっかけになる男性もいます。

決して悪気はないけれど、元カノと今の好きな人を比べてしまう心理とは、どんなものなのでしょうか。

思い出される「告白したときの元カノ」

30代のある男性は、交際寸前のいわゆる「いい雰囲気」の女性がいて、告白するタイミングを考えていたといいます。

ふたりきりのデートを重ねて長電話も当たり前で、「先日、勇気を出して手を握ったら向こうも握り返してくれた」ことで、思いを伝える決意をしました。

それをためらったのは、「一年前に別れた元カノに告白したときを思い出したから」だそうです。

「その女性とも、俺が好きだと言う前から両思いなのは実感していました。

いつものように居酒屋で飲んだ帰りに『付き合ってほしい』と俺から言ったのですが、そのとき、彼女が泣き出したのですね、『うれしい』って。

『自分から言おうと思っていたのに』と、先に俺が告白したことを喜んでくれていました。

結局その日は別れがたくて夜中まで公園でずっと話していて、すごく幸せでした」

その記憶がなぜ今の好きな人への告白を留めることになったのか、

「今の女性は、元カノより淡白というか、俺のことが好きなのはわかるのですが積極的に動くタイプではなくて。

いつも俺から誘ってお店も俺が決めて、それでもいいけれど告白も俺からしない限りは絶対ないだろうなって感じで、元カノとの違いを思い浮かべてしまいました」

と、思いを告げたときの女性の対応を想像して少し気持ちが引いてしまった自分に気が付きます。

「元カノと同じように喜んでほしいとどこかで思っているのかもしれませんね」と言うと、

「……同じようにというか、あんなに感激してくれるだろうかって、不安になります。

当たり前のように『はい』とだけ返されたら、俺は落胆するのだろうなと思って。

自分でも勝手だなと思うのですが、あんな経験をするとどうしても次の人にも期待するのだなって……」

と、男性は落ち着きなく視線を動かしながら答えました。

受け入れてもらえる自信のある告白だからこそ、「過去に経験した同じシチュエーションでの女性の態度」を比べてしまうのかも、と思いました。

「未練」とは違う、今の女性との比較

「元カノのほうがよかったと思いますか?」と単刀直入に尋ねると、男性は顔を上げて

「それはないです。

その元カノとは向こうが別の男を好きになったって理由で別れていて、最後はあっさりしていました。

告白したときを思い出しただけで、未練はないですね」

ときっぱりとした口調で答えました。

その言葉に嘘はないのだろうと思ったのは、男性の口にすることが今の好きな人についてで、意識を向けているのは現在なのだとわかるからです。

「今の女性のことは好きだとはっきり思うし、彼女になってほしいし、たぶん向こうも俺からの告白を待っていると思います。

でも、当然のようにOKしてその場は終わるのだろうなと想像したら、肩透かしというか物足りなさを感じるかもしれなくて……。

こんなのは初めてで、俺もどうしていいかわからないです」

元カノと今の女性を比べてしまうのは、その「告白したときの状況」が男性にとっては強烈な幸せを感じるものだったからで、今の女性は同じにはならないとわかるから。

好きな気持ちを伝えるのはいつだって相当に勇気のいることで、その反動の「肩透かし」によって好意が萎える可能性を、男性は想像したのではないかと感じました。

「元カノのほうがよかったとか、思いたくないのですよね」と言うと、男性はすぐに「そうです」とうなずきます。

客観的に見れば、「すでにOKが想像できる告白」自体が幸せなことであり、相手の態度に“いちゃもん”をつけるような気持ちは傲慢ともいえます。

それでも男性が誰かに打ち明けてでもこの葛藤を解決したいのは、やはり今の好きな人との関係を進めたいからです。

恋愛に向ける「期待値」の高さ

男性の過去の恋愛について話を伺うと、10代のときから好きな人はいて自分から告白する経験を重ねており、交際まで至った人も複数いて、密度のあるお付き合いを楽しんできたことがわかりました。

「関係を自分で引っ張る力」のある人は、相手に向ける好意をしっかりと実感して、そのとき自分のできることに力を尽くします。

その姿が、女性によっては甘えや依存を生む可能性もあって、今回の好きな人は関係を男性任せにしているのが伝わりました。

それに男性のほうも気がついていて、だから「自分が告白しても当たり前のようにうんと答える姿」が想像できます。

それは幸せなことのはずなのに、「それより強い刺激を与えてくれた過去の女性」の記憶が、男性には告白の基準のようなものになっているといえます。

自分の告白は「あの元カノのように感激されるものであってほしい」という理想があり、それに添ってくれないであろう今の好きな人の様子を想像すると、ためらいが生まれるのですね。

恋愛に向ける「期待値」は人それぞれで、経験の多い人のなかにはこの男性のように相手の状態が予想できるからこそ落胆するのが怖い、と感じることもあります。

元カノへの未練はないと言い切れるのに比べてしまうのは、自分が抱える恋愛への期待値が高いからです。

「それを叶えてくれるかどうか」が好意を維持するベースになるのは、男性のほうもどこかで女性に自分の状態を委ねているともいえます。

好きな人とのつながりに積極的でみずから動くことに腰が引けない人であっても、恋愛は一対一の関係なら、相手の態度によって自分の気持ちが左右される部分が出るのは仕方のないこと。

それが告白のようにふたりの関係を新しいものに発展させる場面でのことなら、相手に強い期待をかけてしまうのは、過去の幸せな経験があるゆえ、と思いました。

相手によって「変わってもいい幸せ」

「その女性と、楽しいお付き合いが想像できますか?」と質問すると、男性は少し考えてから

「そうですね、話が合うし何時間も一緒にいられるし、もっとお互いのことを知っていきたいです」

と男性は答えました。

その前向きさがあるから告白を考えるのであって、

「それなら、告白の場面にこだわらず、これからのふたりについてもっと考えみてみたらどうでしょうか」

と言うと、

「あ、こだわっていたのか……」

と、男性は自分の心の状態に気が付きました。

好きだと言いたいけれど「期待値」が下がるのが怖くてできない、その葛藤は、自分の事情でしかありません。

告白は一大事だからこそ満足を求めるのは当たり前で、でもその満足に「相手しだい」を入れてしまうと、苦しむのは自分です。

しかも、その女性の態度はあくまでも男性側の想像でしかなく、実際はどうなるのかは、「言ってみないとわからない」のが現実です。

肝心なのはその女性とどうなりたいか、「自分はどうありたいのか」であって、一つの場面にこだわって先に進めないことのほうが、男性にとってはマイナスなはず。

恋愛に向ける「期待値」を告白の場面から「恋人として過ごす自分たち」に変えてみると、未知のその世界を充実させることにもっと意識が向きます。

本当に女性のことが好きで恋人になりたいと思うのであれば、告白は通過点と割り切ってしまうのが自分のため。

この男性の場合、元カノのことを思い出すのはこの告白の場面が中心で、そのほかの一緒にいる時間ではまっすぐに今の好きな人に焦点を合わせているのが会話で伝わりました。

それなら、告白を受け入れてもらった後の自分たちの変化を想像する余裕も、心にあるのではないでしょうか。

「好きなのに告白を留まってしまう」「元カノと比べてしまう」というのが男性の悩みでしたが、葛藤の正体は、恋愛への期待値の高さによるこだわりでした。

それを別の方向に向ける姿勢は、恋人同士となってからも自分の愛情を育てる強さになると思っています。

元恋人を思い出すのが未練によるものではなく、限定された場面で生まれた強い感情が記憶を呼び起こすのは、誰にでもあるのかもしれません。

問題はそれによって今の好きな人との関係が止まってしまうことで、満足にこだわると最終的に好意そのものを失う結果になりかねません。

自分が抱える「期待値」を上手に動かしていく意識は、何よりも今の恋愛を楽しむ姿勢に欠かせないものなのですね。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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