日本の「人質司法」はなぜ変わらないのか…カギは裁判所にある【「表と裏」の法律知識】

有罪が確定するまでは「罪を犯していない人」として扱わなければならないが…(C)iStock

【「表と裏」の法律知識】#238

6月11日、刑事弁護を主戦場とする弁護士数人が、「取調べ拒否権を実現する会(RAIS)」を設立したと発表しました。この会は、「人質司法を日本からなくすこと」を目的に設立されたといいます。これを機に「人質司法」の議論が高まることを望みたいです。

俗にいう「人質司法」とは、容疑を否認したり供述を黙秘したりする被疑者・被告人に対し、長期間にわたる身体拘束を行い、自白を強要するような捜査機関の取り扱いを批判的に表現した用語です。

被疑者・被告人には「無罪の推定」が及び、有罪判決が確定するまでは「罪を犯していない人」として扱わなければなりません。また、被疑者・被告人には、「黙秘権」が保障されており、取り調べに対し黙秘することができます。しかしながら、容疑を否認したり、黙秘権を行使する被疑者・被告人に対して、有罪が確定していないにもかかわらず、ただ自白を得るために長期間の身体拘束が行われることが普通に行われているのです。実際、私が担当した被疑者・被告人からも、長期間身体拘束を受けつつ、あの手この手で自白するように「説得」を受けた話をたびたび聞かされます。

「他の共犯者は正直に話しているぞ」「黙秘をすることの意味をちゃんとわかっているのか」「保釈が認められなくなるぞ」といった発言や、時には「黙秘をしているのは弁護人の指示か?」「あの弁護人は代えたほうがいいんじゃないか」と発言をしたりして、被疑者・被告人の動揺を誘うケースが見受けられます。

日本では、逮捕・勾留された被疑者については、取り調べを受忍する義務があるという解釈のもと、長時間の取り調べが続けられています。こういった「人質司法」が常態化する要因はどこにあるのでしょうか。私は、裁判所が取り調べの受忍義務を認める傾向にあることが問題だと考えています。裁判所が変われば、必然的に警察・検察の対応も変わります。「人質司法」から脱却するには、裁判所の運用を変えていく必要があることに注目してほしいです。

(髙橋裕樹/弁護士)

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