【アナログで聴きたい名盤】千手観音様のような超絶テク3人のギタリストバトルがハイライト

「ウィルコ/スカイ・ブルースカイ」

【ウィルコ/スカイ・ブルー・スカイ(2007年】

今年結成30周年を迎えたウィルコは、当初の「オルタナ・カントリー」という枠を超えて全米でも屈指のロックバンドとなった。同作は中期の大傑作。全米初登場4位を記録した。

静かなギターソロから始まる「イーザー・ウェイ」から、メロディアスかつ高度でねじれた演奏が展開される。

ハイライトは千手観音様のような超絶テクを持つ名ギタリスト、ネルス・クラインとフロントマンのジェフ・トゥイーディら3人のギタリストによる「インポッシブル・ジャーマニー」。複雑かつ美しいギターバトルが演奏され、堅実でハイレベルなベースとドラムが音を支える。

私論だがこの曲はテレヴィジョンの名曲「マーキー・ムーン」へのオマージュに聞こえる。前者は緊張感に満ちた「軋轢」を奏でたが、ウィルコの曲は空へ届くような伸びやかな音を聞かせる。この曲だけでもぜひアナログで聞いてもらいたい。他にも「ヘイト・イット・ヒア」「ホワット・ライト」など名曲揃いだ。

バンドの近2作「クルエル・カントリー」(22年)、「カズン」(23年)も叙情性と批判精神に満ちた音を奏でている名作なので、CDでもサブスクでもまず聞いていただきたい。ところでジェフの最近の声はジョン・レノンに似てきたと思うのは私だけだろうか?

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